すべてはあの花のために⑦

はて。なんのことでしょう


 お披露目式が無事に(?)終わったものの、次の日から生徒会室の空気は淀んでいた。


「……あ、あっちゃん? 最近は体調どう?」

「ありがとうございますキサちゃん。遅刻していますが、別段酷くなったりはしていませんよ」


 お披露目式が終わり、その翌日からまた、葵は遅れて学校へ来るようになり、同じクラスのみんなは心配していた。


「へー。遅れてくるとか、いいご身分だね」

「あ。アキラくん、この間おいしそうなお菓子見つけたんです。今度よろしければ持って来ますね」

「え? あ、ああ。……楽しみにしてる、けど……」


 ここのところ、とことん葵がヒナタを無視していた。


「知ってた? 一応学校はお菓子持ち込み禁止だって」

「あ。カナデくん、また変な本持って来ていましたね! 回収します」

「えー……。そ、そんなー……」


 前のアキラとは喧嘩みたいになっていたが、仕事中も話さないということはなかった。


「うっわ。カナ最低だね。そんなんだからこいつに相手にされないんだよ」

「いやいや。今相手にされてないの君の方……」

「あ。アカネくんオウリくん。今度よかったら、一緒に稽古どうですか?」

「え? あおいチャン……?」

「あ、あーちゃん体調は……?」

「そういうのは全く問題無いんですよ。寧ろ少し運動した方がいいぐらいで」

「へー。そういうの仮病って言うんだよ。仮病で学校しばらく休んでレンに仕事押しつけるとか、いい度胸だね」


 それだけでなく、やけにヒナタが葵に突っかかっていたのだ。だから、余計にみんなは心配していた。
 ちなみに今は、お披露目会が終わって数日後。新歓の行き先及びオリエンテーション内容、それから交流会の話し合いのため、放課後みんなで集まって話し合いをしようとしていた。


「あ。ちょっとコーヒー作ってもいいですか?」

「あ、ああ。……お、俺が作ろうか……?」

「じゃあオレもコーヒー一緒に作ってー」

「いいですよ。ツバサくんは座っておいてください。一人分だけなんですぐ作れるし」

「え。……ひ、ひとり、ぶん?」

「じゃあオレも一緒に作ろーっと」

「あ。でも、夜寝られなくなるかな。コーヒーは我慢しますね」

「そっかー。じゃあオレもやめる」


 ヒナタは葵のあとをついて回り、無視されてもそんなことを言って、ずっと葵の様子を見ていた。


「お、おい。アオイ」

「あ! はい。なんですか? チカくん」

「あおいー」

「あ、……あのさ。な、何があったんだ……?」

「……? 何がとは? それよりも、まずは百合の生徒会の人たちとの交流会について話しましょう」

「あーおーいー」

「あおいさん? 流石にそこまでしてしまうと、九じょ――バキバキバキッ……す、皇さん。話し合いをしましょう」

「あ。そ、そうだな。……そのことには触れずに、みんな、話し合いをしておこう。取り敢えず」


 みんなが震え上がりながら返事をしている最中、葵はというと、へし折ってしまったペンケースの片付けをしていた。


「ちょっと、大丈夫? 怪我してない?」

「すみません。ちょっとゴミを捨ててきてもいいですか?」

「え? あっちゃん……? ゴミ箱ならそこに……」


 葵は原形を留めていない、かつてはペンケースだったそれを抱え、生徒会室から出て行こうとする。


「それじゃあオレも付いていくー」


 葵は生徒会室外に設置してあるゴミ箱へ、それを捨てに一旦部屋を出た。続いてヒナタも出て、きっと一言も喋らなかったのだろう。葵は帰ってきてすぐに生徒会室の扉を閉めて、鍵もかけた。


< 51 / 245 >

この作品をシェア

pagetop