すべてはあの花のために❾

『あおいさん。もしよろしければ、カードを教えていただけませんか?』

「(やば。めっちゃギリギリじゃん)」


 危ない危ない。もうちょっとでタイミングを逃すところだった。
 耳から聞こえてきたのは、レンとあおいの声。何分会場のざわつきが酷くて聞こえづらかった。


『えっ? それ、本当ですか?』

『え?』

「(すぐに簡単な手品覚えるし、物真似もだけど演技も上手いな)」


 でも、驚いてるってことは、あいつはまだ中身を見ていない。だって、見てたら今頃必死でペアを捜してただろうし。


『……え』

「(レンのカードを見たか。自分が作った覚えのないカードだ。驚いて当然)」


 タイミングを見計らって、ブレーカーの前へ行く。


「(ほんと、会場はざわついてるはずなのにね)」


 どうしてこいつの声だけは、反応だけは、鮮明にわかってしまうのか。


「(……息、詰まったな)」


 ――そろそろだ。
 ブレーカーに手を掛ける。



『れんくんッ!!』

「タネも仕掛けもない。ショータイムの始まり始まり~」


 ガチャンッと、一気にブレーカーを落とした。


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