すべてはあの花のために❾
柚子
薄らと白む空に、鳥の鳴き声。
「(マジで完徹か。昨日だってそんなに寝てないのに……)」
ま、悶絶して以降テンション上がって寝付けなかっただけなんだけど。
「……ヒナタ。もうみんな起きたぞ」
「え。早くない? まだ太陽出てないんだけど……」
そのせいで、まだ辺りは薄暗い。
「アキは電話するらしい。ツバサは素振りしに行った。オウリとアカネは稽古するって。カナは朝飯の準備して来るって」
「そっか。オレらのことを労ってくれる人は誰もいないんだね」
「……よく頑張った。ヒナタ」
「うん。まあそれほどでもある」
「え。オレは?」
「オレ風呂入ってこよ」
「おいー……!」
「え。嫌だよ。チカと一緒に裸の付き合いするの」
「昨日したじゃん……」
「みんながいたから仕方なくだよ」
冗談だとわかっているにもかかわらず、しゅんと小さくなるチカに小さく笑う。
「ま。チカもちょっと寝たら? オレは眠気覚ましにお風呂もう一回もらってくるけど」
「……ん。オレも、ヒナタが上がったらそうするわ」
「そ? それじゃあお先にー」
「上がったら起こして? じゃないと絶対そのまま爆睡する」
「りょーかーい」
それからチカは、そのまま死んだように少しの時間爆睡した。
オレは脱衣所まで来て、取り敢えずユズに今日そっちへ行く時間を、朝早いけどメールで送っておいた。それから、ほんとにさっと風呂に入ってすぐ上がったあと、先生に連絡を入れる。
「(やっぱり出ないか……)」
もうっ。夜中も結構掛けたのに。この人全然出やしない。
「(もう知らないよ? みんなにバレても。取り敢えず、今日行く時間だけは言っておくけどさ……)」
そうしてメールを送ったら、ユズから着信が来た。どいつもこいつも早起きだな。
「もしもし?」
『あ。……おはよ~。ひなくん』
どうやらまだ半分寝てるみたい。
「ごめんね。急なんだけど」
『ううん。全然だよ~。みんなに会えるから嬉しい』
「メールでも言ったんだけどカナ、家族ともう大丈夫だから」
『……うん。ほんと。よかった』
「またそっちに行ってから、カナに聞いてみるといいよ」
『うん。そうする』
「それでさ、ユズにお願いがあるんだけど」
『ん? なんだろう? ひなくんには、中学の時からいろいろお世話になってるからねえ。あたしでできることかな?』
「あのさ、一人新しいメンバーが加わったんだ。そいつと、友達になってあげて欲しい」
『え? そんなこと?』
「友達になって、いろいろ話を聞いてあげて欲しいんだ」
『……どんな子?』
「女の子。ちょっといろいろ難しい子でさ、自分のこと話すのが嫌いなんだよ」
『ふーん。そっかあ』
「キサにもお願いしてるんだけど、いろいろと足りないとこがあるんだ」
『足りないって?』
「多分話してたら気がつくよ。取り敢えずユズも、仲良くなってくれると嬉しい」
『うんっ! あたしでよかったら!』
「……そいつさ、まだオレらぐらいしか友達いないから。ユズもなってくれたら多分すごい喜ぶよ」
『その子も今日来るんだよね?』
「そうだよ。でもきっと、友達になりたいって思う」
『うん! みんなと友達だもん。あたしもなりたい』