すべてはあの花のために❾
「やっぱりあるんじゃん」
「カオルやめて」
「いいえアイさん。もう彼しかぼくらを、彼女を、お父さんを助けてくれる人なんていないです」
「そうかもしれない。でも、それは言わないで」
「いいえアイさん。理由は知ってもらうべきです」
「いいから。言わなくていいから」
「そうすれば、アイさんを味方につけることを向こうの方から断るかもしれません」
「かもじゃなくてそうだから」
「だったら話してきっぱり諦めてもらえばいいじゃないですか」
「言わなくていいんだ」
「……アイさん。このままでは一生無理ですよ」
「ちょ、……何勝手に盛り上がってんの?」
「言わなくて、いいんだ」
「……アイさん。それは、『言えない』の間違いじゃないんですか」
「無視ですか……」
「たとえそうだとしても、今頃になってどうしろって言うの」
「いいんですか? ずっとずっと。他でもない九条さんに、アイさんは会いたかったでしょう?」
「……アイ? カオル……?」
「……っ、俺が。言ってしまったら。彼は、救うことをやめてしまうかもしれない」
「でも、ずっとお話がしたかったんだと言っていたではないですか。それが今、向こうからこうしてやってきてくださったんです」
「……何。どうしたの」
ヒナタが何度突っ込んでも、完全に二人の世界で置いてけぼりである。
「アイさんが言わないなら、ぼくが代わりに言います」
「……!! そんなことしなくていい!!」
「いいえ。ぼくはアイさんの友達なので。それぐらいお茶の子さいさいです」
「いや、俺いじめたいだけでしょ」
「いいえ。今回ばっかりは違います。いつもはそうですけど」
「カオル……」
「アイもカオルにいじめられてるんだー」
今までに見たことがないくらい真剣な顔で、カオルは彼に向き合い始めてしまう。
「あなたに、……九条さんに。お話しがあるんです」
「……? うん。何?」
流石に、友達にそんなことさせられない。そんなこと、させちゃいけない。
玄関から「待って」と声を掛ける。
「カオル。ちゃんと、俺から話すから」
「でもアイさんがそれだと苦しいじゃないですかあ」
「たとえそうだとしても、こんなこと友達に言わせるようなことじゃない」
「……わかりました。頑張ってくださいね?」
カオルは小さく笑って、俺の背中を押してくれた。
「九条、……ひなたくん」
「うん。……何? 道明寺藍?」
「え。よ、呼び捨て……」
「え。だってアイって言ってるし」
「そ、そっか。……まあ、いっか」
「……それで? 何? なんで誰にもつけないの? アイが苦しんでるなら、オレが助けてあげるよ?」
「ありがとう。……でも、俺は誰にもつけないし。ましてや君にはつくことなんてできないんだ。……ううん。きっと、つくことなんて。許されない」
「その理由は?」
「……俺が。消したんだ」
「何を?」
「…………っ。君の双子のお姉さんを。……消したのはっ。俺なんだ!」
「――……ッ!」
そう言いきった刹那、彼は内ポケットから何かを取り出して俺に向けた。