すべてはあの花のために❾
「……へえ。そうだったんだー」
彼が取り出したのは、紛れもない拳銃だった。
「ちょっ、九条! これは計画にはなかっただろう……!?」
「そんなの、今の話聞かされて、黙ってられると思う?」
「九条くん! アイくんの話をちゃんと聞いてあげて!」
「ハルナがどれだけ苦しかったのか。オレが、オレらがどれだけ苦しんだのか。あんたらにはわからないからそんなことが言えるんだよ」
「く、九条さんっ。アイさんは決して、わざとそんなことをしたわけではないんですっ!」
「わざとじゃなかったら許されるの? そんなのね、たとえみんなが許しても、オレが許すわけないじゃん」
彼はそんなことを言いながらも、俺の額を確実に狙ってきていた。でも俺も、動こうなんて思わなかった。
「……へえ。潔いね」
「まあ、俺がしたことは変わらないから」
「……そんなこと言って、許されるとでも思ってんの」
「思ってない。でも言わないとと思ってたんだ。ずっと」
「…………」
「許されないのはわかってる。そもそも、こんな俺は、助けを求める資格なんてないんだ。ましてや君につくなんて。そんなこと、俺にはできない」
「…………」
「でも。……どうか。父さんは。あおいさんは助けて欲しいんだっ」
「そんなこと言える立場だと思ってんの?」
「わかってる。でも君にしか頼めない」
そう言いながら、頭を下げて懇願する。
「どうか二人を。助けてあげて欲しい。家を壊して欲しい。俺を。……楽にさせて欲しいんだ」
「……そ」
ガリガリと、レバーを倒す音がする。
「九条くん!」「九条!」「九条さん!」
「今ここで楽にしてあげるよ」
「……君の気が。それで済むなら――」
そう言い切る前に、彼は躊躇いもなく引き金を引いた――――。
「……。え……?」
チョロチョロチョロ……。
「え。……いや、本当に本物だと思ったの? バカでしょ。持ってるわけないじゃん」
水鉄砲が、どうやら発射されたようで。髪の毛がびしょびしょになった。
「え? え……?? く、九条くん……??」
「ったくさあ、そこで話し終わらせてどうするの」
「え……??」
「そこで終わったら本当にアイが悪者じゃん。だから、ちゃんと最初から最後まで話して。どうせ家が絡んでるんでしょ」
「で、でも……」
「それを聞いてどうするかはオレが決める。だから、アイはまずオレに、最初から最後まで話なさい。いい?」
「は、はい。すみません……」
「……こう言ってあいつも、すんなり話してくれたらいいんだけどね」
「え……?」
「いや、何でもない。だから教えて? オレには聞く権利があるはずだよ」
「……うん。聞いて欲しい。そう言ってもらえて、俺はもう十分気が軽くなったよ。ありがとう」
「え。悪いけどオレはもやもやしてるから、さっさと言ってね」
「あ。はい……」
「いいですねえ! そのS加減!!」
それから俺は、彼に逐一事情を説明した。