すべてはあの花のために❾
部屋に戻ったら、なんだか寂しそうなあいつが。チカが大慌てであいつに駆け寄って心配してたけど、なんか「――カチッ」って。スイッチが入った音がした。というか、あいつが言った。
どうやら、あいつの変態スイッチがONになったらしい。しかもなんかラブラブなんだけど。
「(何してるの、あの二人……)」
でも何でか、チカだとそんなに慌てない。だって多分あいつ、チカのこと猫さんってよく言ってるから、小動物にしか見えてないんだろうし。若干そんな、小動物を愛する目線でチカが喜んでるのに引きながら、スマホで一応写真を撮ってみたりする。これでチカを脅そう。キモいよこれ、って。
でも、あいつがチカに抱きつきやがった。――そうなったら話は違う。
「(……カチってね)」
今度はオレのいじめスイッチがONになる。
……対象者? そんなのチカに決まってるじゃん。あいつへのスイッチは、いじわるスイッチだからね。ここ重要。
「……何してるのあんたら」
そう言いながらチカに何発も拳を入れる。早くそっから出ろ。胸が大っきくてやわらかいのわかるけど、本気でムカつくから。
しかもあいつもすっごい嬉しそうだし。……ムカつく。
「……ふーんそうなんだ。オレもデレネコさん見たいから、ちょっとチカ貸してくれない?」
バキバキッと指を鳴らす。でも、そしたらチカがあいつに抱きついた。
「今すぐ離れないと、お前のスマホにこいつのドレス写真がいっぱいあることバラす――」
「わああああああ!」
まあオレも持ってるけどね。キサから男子には全員に送られてるし。こいつには……送ってるのか知らないけど。
でも、どうやら流石にいじめすぎたらしいから「ごめんごめん。ちょっとの間違いだった」ってフォローを入れておこう。
うん。これで十分だ。あいつの胸に顔を埋めるとか、大罪だしね。フォロー入れるとか、オレやさしい。
「ん? ……いいよね。人の思い出になれることが」
チカのスマホを、二人で並んで楽しそうに見ていた。
「(思い出だけで、終わらすわけないじゃん)」
そんな二人の楽しそうな写真を、パシャリ。一枚撮る。
「(……あとでチカに、お詫びにあげよ)」
何より、楽しそうなあおいを見ることができて、少し自分も嬉しかった。
みんなで朝食を食べるってなった時、何やら不穏な空気が流れていた。
「(……何。何があったの……)」
原因は、どうやらオレがつけたあの印らしい。でも、それをなんとかシオンさんが乗っかってあいつに蹴られながらもピンチを救ってくれた。……いやいや。悪かったね。マジで。
それから、一旦家に帰って、お昼にまた集合。
マサキさんとあいつが、何か話してる。初めは楽しげだったんだけど、途中からおかしくなった。
「(何があった……)」
「おい、あいつ……」
オレが見ていた視線に気がついたのか、チカも険しい顔をする。
でも、アキくんとカナはマサキさんにガチで嫉妬したらしい。やれやれ。流石に、アキくんの気持ちには気がついてあげようよ。
「大人でかっこいいなと思いました! 以上!」
まあそんなこと言われたらみんな撃沈だけどね。年齢なんてもうどうしようもないし。
「(オレ、ただでさえ年下なのに……)」
変な励まし方だったけど、キサに声を掛けてもらって、各々あいつをいろんな場所から守ることにした。
「ちゃんと見えてるから。あんたたちがやってることは、絶対に届いてるよ!」
その時は、もちろんだって。当然だって。自信満々に笑顔を返したけれど。
「(……見えてる、か……)」
レンを好きになって、幸せになって欲しい自分。汚いオレを好きになって、幸せになりたい自分。
見つかりたくなかった。こんな汚れきった、こじれきった自分を。でも、見つけて欲しかった。こんなに君を、好きな自分を。
「(……あーもう、わけわかんないし……)」
一旦帰ってきて、時間までそんなことを考えながら、オレはほんの少しの間眠ることにした。