すべてはあの花のために❾
閉祭式には、キサとハナは出てこなかった。
「(あれか? もしかしなくともオレが原因か……?)」
そう思ったらちょっと恥ずかしくなってしまったけど、チカに「どうした?」って言われて殴ったら、取り敢えず治まった。ヨカッタヨカッタ。
そのあと、みんなで片付けをしてたんだけど……。
「(消えてる。よかった……)」
ハナの首を見て、ちょっとほっとしてたりもする。いや、ほんとごめんね。
「(……エンジュさん?)」
彼がハナと話していた。何があったんだろうか。
「(あ。もしかしてあれか……)」
何となくわかったオレは、あいつがちょっと抜けると言っても引き止めはしなかった。
そのあとオレらは、ハナがいない中校内の見回りをザッとすることに。アキくんはハナと一緒に回るって約束してたけど、それができなくて残念そうだった。それもあって、アキくんにハナと入れ違いになっちゃいけないから、控え室で待ってればって言ったら、喜んで待っておくと言っていた。
それから一通り涙目のチカを携えて、気分が悪くなりながらオレもなんとか見回りをして帰ってきたけど、まだハナは帰ってきてないみたいで、流石におかしいと思った。
みんなで何かあったんじゃないかと思って、捜しに行こうとした。この間のこともあって、分かれて捜すのは戦力的に不味いと思ったから、みんなで固まって動いた方がいいってことになったんだけど。
「……多分だけど、あそこだと思う」
ハナはエンジュさんに連れられて、体育祭の時に襲われたところへ行ってるんじゃないかと思った。
「すごいね! ひなクン! 大正解だね!」
そうアカネが言ってくれるけど、オレらが着いた時は、ハナが大の男共を庇って奴らに向き合っていた。
あの三人には、遠回しにハナにちゃんと謝れっていう脅しのメールを送ってたからな。今日がそのチャンスだと思ったんだろう。エンジュさんも協力してくれたみたいだし。
「(でも……)」
みんなはあのメンツを見て何も思わないんだろうけど、チカとキサは奴らを睨むように。そしてカナは、どこか失望したような、どこか諦めのような表情を浮かべていた。
「……カナ。危ないから、キサと二人で向こうで隠れてて」
カナにしか聞こえない声で、そう指示する。
「え。……ひ、ヒナくん……?」
「絶対にキサを守ってよ。『近づかないことで守る』って決めたんなら、最後までそうして」
「…………っ」
カナは、キサにそっと声を掛けて彼らの死角へと姿を消した。
「(……ばか。それじゃあダメなんだって)」
そうこうしているうちに、ハナがピンチになってしまった。
「――行くぞ、みんな」
アキくんの声に合わせて、ハナを助けるために飛び出した。
「あーごめんツバサ。鈍ってるし睡眠不足で昔ほど動けないわー」
「はあ!? ……ちょ、アンタいい加減にしてよっ!」
ちょっと押され気味になってそんなことを言ったら、ツバサにキレられた。
「……あれ?」
「…………」
でも、どうしてだろう。目の前のオレと戦ってる奴は、そんなオレにも手加減をしているみたいだった。
「……何が目的」
「…………」
取り敢えずは、オレらに危害を加えるつもりはないらしい。
「(……ッ、だったら……!)」
そう気がついた時にはもう遅い。ハナが、関西弁野郎のマサキさんに連れて行かれた。みんなで唯一動けるカナの名前を叫んだら、キサに怒鳴られたけどね。
「……これが目的? 五十嵐組の人」
「……悪いな、九条くん」
流石、カナのことを心配していただけのことはある、か。
それにオレらは昔からの友人だからな。オレの名前くらい知ってるだろう。――――でも。
「あなたに残念なお知らせです」
ハナを連れて行かれたんなら話は変わる。一気に距離を詰めて切り込む。
「……ッ!」
「あなたがさっきから気になってちらちら見ている生足はっ!」
ス――ッ! と顔のギリギリのところを木刀で突いて一瞬怯んだところを、回し蹴りして左頬を蹴り倒す。
「ぐはっ!」
「はあ。……あれ、うちの兄貴ですよ」
「え…………(ガクッ)」
いろんな意味で彼は気絶した。申し訳ないね。こんな形で裏切って。