極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~

 一度どこかのパーティで顔を合わせたことはあったけれど、人間味のかけらもなかった。
 実のところ、彼は異常なほど見た目がいい。
 百八十センチを超えている身長、すらりとしつつ鍛えられているのがわかる体躯、精悍で端正なかんばせ。
 恋などできない私ですら一瞬目を瞠った。

 そんなわけで女性が次から次へと擦り寄ってくるにもかかわらず、なびくどころか優しくする素振りすらなかった。
 あれだけ胡麻を擦られれば、多少なりとも態度が軟化していいだろうに──

 一部では「極氷」なんて呼ばれ方もしているらしい。
 なんでも、厚さが三メートル以上ある海氷のことだとか。
 大柄で冷淡なところからだろう。影で「氷の女王」なんて呼ばれている私とは似合いなのかもしれなかった。

 つらつらとそんなことを考えつつ、吉岡と今日の予定について会話していると、私の会社に着く。小さいけれど自社ビルだ。
 一階は直営の紅茶専門のカフェで、主にフランス直輸入のフレーバーティーを扱っている。
 最上階にあるフロアでエレベーターを下りれば、廊下の左右にずらりと社員が並んでいた。

「おはようございます、社長。あれ、ピアス新しいですね。お似合いです」
「おはよう。そうなの。気がついてくれてありがとう」

 歩きながら口元を緩めると、声をかけた社員が両頬を染める。

「も、もったいないお言葉っ」
「社長、あのっ、おはようございます! 今日もお綺麗です……!」
「ありがとう、あなたもネイル新しくしたのね。可愛いわね」
「はぅ、あ、ありがとうございます……っ」

 基本的にうちの会社は女性が中心だ。商材が商材なので興味のある人材を集めていたらそうなった。
 それにしたって。

「ねえ吉岡くん。うちの会社って、少し雰囲気が他と違うわよね?」

 社長室の扉を開く吉岡に聞いてみると、彼は不思議そうに振り向いた。
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