極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
そうして向かったお見合いは、とてもビジネスライクなものだった。正直、ホッとする。
「ではこれからよろしくお願いします」
料亭の前で車を待っているとき。
簡単な挨拶のあと、宗之さんが私の髪の毛を興味津々に撫でたのは不思議だった。一体何が面白くて宗之さんはこんな行動を?
「……なんです?」
「ああ」
なんでもないことのように宗之さんは答え、私の頬を撫でて「温かいな」と微かに眉間を緩めた。
頬を撫でる男性らしい筋張った、少しかさついた指先にどぎまぎする。習慣のおかげで、顔には出ていないと思うけれど。
「一体なんです」
「いや、温かいなと思ってな」
「そりゃあ、そうでしょう……?」
眉を寄せつつ彼を見上げる。
「君はあまりにも綺麗な人だから、氷の人形みたいに冷たいのかと思ったんだ」
そんなことをさらりと言い放ち、宗之さんは私の耳をくすぐる。
「柔らかいし」
「ちょ、っと……これはセクハラでは」
「どうして。俺たちは婚約しただろう?」
「契約上は、です。それにこんなこと契約の条項には」
「入っていない。なら問題ないだろう?」
じっと精悍な瞳で見つめられそう言われると、それもそうかという気分になりかけて困る。
これが寒河江宗之のカリスマ性というものだろう。
彼には人を従わせる不思議な魅力があった。
御曹司としてではなく、一流の経営者として世界的に名前が知られているのには実力派もちろん、そういったところも要点なのだろう。
「と、とにかく。私はちゃんと生きている人間ですので」
「それは知っている」
冗談のつもりだったのに、真面目に返されてしまった。むっとすると宗之さんはフッとほんの微かに頬を緩めた。からかわれたのだと唇を尖らせそうになって、我慢する。
感情を出したところで、いいことはなにもない。
過去の悲しい記憶が蓋を開けそうになり、耐える。