極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「ね?」
「……次回までに反論の論拠を探しておくわ」
「はいはい」
梨々香にあしらわれながら、紙袋に入っていた箱を開く。とても可愛いアンティークの人形用のカップとソーサーのセットだ。小指の爪半分ほどしかない。私は思わずドレスの胸元を握りしめる。
「っあ、か、可愛い……」
「あら。志津子さんたら、完璧にあなたの趣味分かってるじゃない? それにしてもこれ、結構高価なものね」
さきほど梨々花が私を“少女趣味”とからかったのはこのためだ。
「百年以上前のアンティークのものよ。これでこの間買った人形とお茶をするわ。とても楽しみ。写真も撮ろう」
「三花のアカウント、人気だものね。相変わらず、周りの人には秘密なの」
「秘密に決まってるわ。私のイメージと違いすぎる……」
私の趣味は、アンティークやヴィンテージの陶器の可愛らしい人形集め。5センチほどの小さなものをたくさん集めている。ほかにも、アンティークのリボンや茶器、アクセサリーも。
幼少期大好きだった人形やぬいぐるみを小学校入学時に『もう小学生なのだから』と全て捨てられた反動かもしれない。
大学生のころ、短期留学先のロンドンの蚤の市で小さな人形をみかけて、ついつい買ってしまったのが発端で、すっかり嵌ってしまったのだ。もちろん周囲には内緒。知っているのは梨々香と志津子さんだけだ。
「寒河江さん……旦那さんには言っているの?」
「まさか! 秘密よ。絶対に秘密」
「どうして」
「弱みに、侮られみくびられる要素になってはいけないわ。兄にバレてさんざん『いい年をして人形遊びか』って嘲られたのよ。きっと宗之さんの反応だってそんなものよ」
「そうかしら?」
「きっとそうよ、顔には出ないかもしれないけれど」
なにしろ"極氷"寒河江宗之だ。
「とにかく、彼の前では完璧な人間でいないと……今のところ、彼は敵ではないにしろ、味方でもないのだから」
「警戒心強いわね」
「警戒してし足りないことはないわ。いつ裏切られるかわからないもの」
「裏切る……、ってつまり、現状、彼を味方だと思っているから出る言葉じゃないの?」
「さっきから揚げ足を取るわね」
「いいじゃない、新婚さんなんて揶揄いたくなるのよ」
私は閉口した。まったく、私と宗之さんを見て「新婚」と言えるだなんて。