極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~

 とにかく、敵か味方かわからない伴侶を得て会社を守った私の新生活は、宗之さんが持っていたという一軒家でスタートした。別居にしなかったのは、父に対する『ちゃんと結婚しましたよ』というけん制だ。

 それにしても、一軒家だなんて、簡単に言ってはいけないかもしれない。
 私が生まれ育った家もそこそこ大きかったけれど、この家は気品のある古い屋敷だ。
 都心までアクセスのよい、旧くからの瀟洒な住宅街に佇む二階建ての邸宅だった。
 昔からの家ということもあり、敷地もかなり広い。

 なんでも、大正末期に建てられた家屋を耐震工事し、さらに室内をフルリノベーションしたものだそうだ。
 クラシカルな様式をとった白を基調とした外観に、内観もそのイメージに合うものにされていた。

 なにしろ玄関を入ってすぐ、真紅の絨毯とアーチ状になった真っ白な天井に出迎えられる。
 濃い飴色に磨き込まれた階段の手すりは洋風でありながら、彫られているのは和風の鶴だ。
 和洋折衷だった当時のもの、そのままらしい。

 そういった意匠全てに、アンティーク好きの私が内心どれだけ喜んだか。

 まあ、顔にも態度にも出していないし、宗之さんもいちいち「気に入ったか?」なんて聞いてこない。事前の取り決め通り、二階にある洋間をお互い自室とし、食事は各自、掃除や洗濯などはハウスキーパーに任せた。

 私たちはすぐに日常に戻った。
 ビジネス中心の毎日だ。

 朝起きて部屋付きのシャワーで目を覚まし、着替えてドレッサーでメイクする。柔和な顔立ちが目立たぬよう、アイラインのほんの少しの跳ねにすら注意を払って。

 宗之さんを見かけることはほとんどない。たまに顔を合わせるし、食洗機にマグカップが入っていたり、ミネラルウォーターのペットボトルが捨てられていたりと、どうやら生活自体はしているようだけれど。

 思った以上に気楽なものね、と内心で安堵していた矢先のこと。


 宗之さんと突然遭遇したのは、出張先のロンドンから帰国した翌日のことだった。

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