極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~

 久々の休日を満喫しようと、寝起きにのんびりと階段を降りて目を丸くしかけた。

「あら」

 小さく声が出てしまう。オープンスタイルのキッチンに宗之さんが立っていたからだ。
 白いシャツにゆったりとした黒いボトムスの彼は朝日に照らされ、まるで映画を観ているかのような感覚になる。

「おはよう」

 端正な彼に似合う掠れ気味の低い声にハッとして「おはようございます」と挨拶を返して、ようやく気がつく。

 私、部屋着のままだった! 着心地のいい、フワフワの素材のパステルカラー。

 私のキャラクターじゃない。しかもすっぴんだし!

 あまりにも無防備だったし、なぜか彼に見惚れてしまっていたし、完全に気が抜けていた。
 そもそもまさか彼が平日に在宅しているだなんて思っていなかったのだ。
 気まずく思いながら階段を戻ろうとした背中に、宗之さんが声をかける。

「コーヒーを淹れるんだ。飲んでいかないか」
「ああ……じゃあ、着替えてきます。申し訳ありません、部屋着のままで」

 社交辞令だろうが、断るのも角が立ちそうで頷く。すると彼は「そのままでいい」と淡々と言う。

「自宅におけるドレスコードなんて決めてなかっただろう? 俺もオフだし、部屋着だ」
「それはそうですが」

 オフで部屋着なのに撮影中の俳優みたいに決まっているの? 内心舌を巻く。おそらく普段からかなり自分を律している人だ。

「君も休みなのか。今日だけ?」
「午後からは会議があるので顔を出そうかと」

 答えながらふと思い出した。

 寒河江宗之は社交辞令なんて使う人間じゃない。

 なら、本心から私を誘ったってこと?
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