極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「そうか」
宗之さんは? と聞くべきなのか、踏み込むべきでないのかわからない。
今日だけなのか、なんなら半休なのか、しばらく休みなのか。
しかし宗之さんは気にする素振りもないまま、コーヒーミルをくるくると回す。
コーヒーのよい香りがあたり一面にふわりと広がった。
──手で挽くんだ。こだわりかな。
私は階段を降り布張りのソファに座りながら、キッチンの彼の姿をぼんやりと眺めた。
こうして日が当たると彫りが深めなのがよく分かる。軽く伏せたまつ毛は少し長めだ。
男性らしく、そして綺麗な人だ。
ケトルのお湯が沸く音が、クラシカルな室内で穏やかに響く。
彼は慣れた手つきでドリッパーにフィルターを用意して、湯通ししてから挽いた粉をセットする。
お湯が注がれると、さらに良い香りが広がる。
思わず集中して彼の姿を見続けた。
結婚式の日、私の手を握った大きな男性らしい手は、想像以上に器用にコーヒーを淹れていく。
マグカップに注がれたコーヒーが目の前のローテーブルに置かれて初めて、私はどうやら宗之さんに見惚れていたのだと気がついた。
「……あ」
「疲れていそうだな。出張だったんだろう?」
マグカップから視線を上げ、宗之さんをまじまじと見つめた。どうしてそんなこと知って……?
私の視線の意味をすぐに察してか、彼はほとんど表情を変えぬままくちをひらく。
「妻の予定くらい把握している」
「そ、うなんですか」
私は宗之さんの予定なんて全く知らないのだけれど……。彼はその辺はどうでも良さそうに、私の横に座ってのんびりとマグカップに口をつける。
どうやら機嫌がいいらしい。
「コーヒー、ありがとうございます。いただきます」
声をかけてから口をつけ、つい「ほう」と息を吐いた。
お茶派の私だけれど、このコーヒーは本当に美味しかった。
宗之さんは「どうだ?」なんて聞かない。私は不思議な安心感と一緒に、彼と並んでコーヒーを飲む。
リラックスしてしまっている自分に戸惑う。きっとコーヒーが美味しすぎるせいだろう。そうに決まってる。
あらかた飲み終わったころ、宗之さんはふと私を見て微かに眉を上げた。
「なんです」
宗之さんは不思議そうに私の目元をその男性らしい太い指の腹で優しく擦る。心臓が変な感じでざわめいた。