極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
それをたまたま本人から聞いた私は、すっかり油断していた。
このお屋敷のリビングの横には、小さなサンルームがついている。
ほぼ建てられた当時のまま残されているそうで、ここがまたクラシカルでとても上品。
庭のパッションピンクの秋薔薇も格子窓越しに見えてとても映える。
そもそもこの木製の格子自体が、くすんだパステル調のエメラルドグリーンでとっても可愛いのだ。
最近はここでコレクター品を眺めたり、SNS用に撮影するのがビジネスの合間の日課となりつつある。
「こうやって……と。うん、よし」
サンルームに置かれている猫足の木製テーブルに、小さな猫の人形をいくつか置く。
すべて三.五センチほどの陶器製で、百年ほど前にフランスで作られたヴィンテージ品だ。
「今日のテーマは子猫と薔薇、ね」
小さく微笑みながら、自分で淹れたフレーバーティーをお気に入りのカップに注ぐ。
カップとソーサーはそれぞれ別の蚤の市で手に入れたバラバラのものだけれど、雰囲気がとても合う。
ふたつとも薔薇が意匠なのだ。
サンルームをフレーバーティーの薔薇の香りが満たす。
私は数枚写真を撮ったあと、一人がけのソファに座る。
丸っこいのが愛らしい、ボタンダウンのオフホワイトの布張りのものだ。
座ると、微かに床板をソファの脚が擦る音がした。
そうして人形と秋の日に照らされる薔薇を眺め、のんびりとお茶を口にしているうちに、どうしてもウトウトしてきてしまう。
「ここ最近、寝ていなかったから……」
言い訳のように呟いた。このところ忙しく、一ヶ月ぶりの丸一日オフなのだ。
普段はきっちり土日は休んでいるのだけれど。そうしないと部下たちに怒られてしまう。
「なんだか私の部下たちは過保護な気がするわ。気のせいかしら」
ひとりごちて、ソファの背もたれに身体を預け、目を閉じる。やってくる眠気に抗わず、ゆったりと身を任せた。
そうして、どれくらい時間が経っただろう。
ふと目を覚ますと、あたりはもう夕暮れの色に染まっていた。
やだな、寝過ぎた。
そう思って身体を起こし、違和感に目を瞬く。身体にブランケットがかけられていた。
「え?」
「起きたか」
低くて掠れ気味な、最近聞き慣れた声。
バッと視線を巡らせると、なんと向かいの席に宗之さんが座っていた。
現実が理解できずフリーズする私をよそに、膝の上に乗せたノートパソコンをぱたんと閉めた宗之さんは「触ってもいいか」と許可を求めてくる。