極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「……え?」
「猫」
「猫? あ、人形……? どうぞ……」
寝起きで頭が働かないなりに、ようやく現実が理解できていく。
見られた。
人形を並べて一緒にお茶しているの、見られた! 兄の『お前、いい年をしてそれはないよ』と嘲り半分の呆れた声が耳の奥に蘇る。
きゅっと唇を噛んだ。
宗之さんも呆れているに違いないわ。
それでも平静を装うため、いつも通りの表情と口調で口を開いた。
「出張だったのでは?」
「ああ、早めに終わって。やることもないから帰国した」
淡々と言う彼は丁寧に人形を手に取り、じっと眺めたあとまたテーブルに置いた。
「これはヴィンテージ品か?」
「そうです」
内心冷や汗をかきながら答える。
「集めているのか」
「ええ」
「ヴィンテージの小物が好き?」
「……というより、アンティークだったり……人の手を経て愛されてきたものが、素敵だなと」
つい素直に答えてしまう。
「そうか」
彼はそれだけ言って立ち上がり、ノートパソコンを抱えてサンルームを出て行った。
私は後悔で胸が押しつぶされそうになっている。
「やっちゃった……」
女子供と軽んじられる真似はよそうと思っていたのに。
可愛らしい陶器人形たちは、円らな瞳を秋の夕日に輝かせていた。