極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「どう、とは?」
「仲良くやっているのかって聞いているんだよ。お前は本当に朴念仁だからな」
応接セットのソファにすわり、コーヒーを口にしながら苦笑する。
「朴念仁ですか、初めて言われました。婚約者とは順調です」
「へえ!」
義之さんはカップをソーサーに置き、興味津々に俺の顔を覗き込む。
「デートとかしているのか。想像できないなあ、お前が女性とデート」
「デートはしていません」
「……は?」
義之さんは整った顔で渋面を作る。
「デートしていないって、どうして。忙しすぎるのか? 女性とデートする時間くらい作れよ、一流の男なら」
彼の言う“一流の男”がなんなのかは知らないが、義之さんは実際多忙の合間を縫って様々な女性と浮名を流していた。
そのせいか、まだ独身だ。
「会う必要がないので」
「あるだろ……結婚するんだから」
「結婚のための話し合いは完了しています。細かな部分については秘書を通して調整しているので、問題は」
そう淡々と説明すると、義之さんはあんぐりと口を開いた。
「ありありだろ! 極氷だのなんだの言われているの、小さいころからお前を知っているオレとしては大げさだと思っていたけれど、そんなことはなかったな、この永久凍土」
義之さんは失礼なのだか失礼じゃないのだかよくわからないことを言って、俺を指さした。
「北里三花さんだったか。綺麗で有名な女性じゃないか。あんな人と婚約して、浮かれないお前は変だ」
断言されてしまった。俺は黙ってコーヒーを口にする。
「浮かれるような男を、彼女が好むとは思えません」
三花の冷えた美しい湖のような瞳を思い出す。朝日に輝く薄氷のような、どこか儚い美しさが彼女にはある。
「ふうん。じゃあかっこつけてるってわけ」
「つけてません」
「全く、理解できないぜ」
そう言って義之さんはソファの背に身体を預けた。
「いつまでもフラフラしている義之さんに言われたくはないのですが」
「ん、オレだってそろそろとは思っているんだ。近いうちに紹介する」
「そうですか、父も気にかけていました。なによりです」
「……というか、びっくりするかもしれないな」
「どういう意味です」
「まあ、お楽しみってこった」
義之さんはそう言って立ち上がり「お前も幸せになれよ!」と快活な笑顔で俺の肩をバシバシと叩いた。そうされると、ついつい幼少期のように笑ってしまう。
そしてやってきた結婚式。
三花の冷涼で氷のように整えられた表情に垣間見えた緊張と不安に、不思議なほど庇護欲をかりたてられ、守ってやりたいと思った。