極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~

 いざ一緒に暮らし始めてみると、冷たく美しい仮面の合間から、可愛さが見え隠れしていた。
 化粧をしていないとあどけない双眸、コーヒーを飲む時のほっとした眉間の緩み。

 ──そして。

「……寝ているのか?」

 ニューヨーク出張、仕事が早めに終わったため予定を前倒しして帰宅したその日。
 リビングに行くとサンルームに人の気配がした。
 三花がいるのだろうと顔を出したそこで、彼女はあどけない表情で静かに寝息を立てていた。
 テーブルの上にあるのは、空になったカップと、いくつかの小さな陶器人形。
 大切そうに、まるで一緒にティータイムを過ごしている友人かのように飾られていた。

「猫?」

 触ってみたくなったが、割れ物だし大切なものだろうと我慢する。
 俺はテーブルを挟んだ向かいのソファに座り、穏やかに夢を見ている三花を見つめる。

「そんな顔で眠るんだな」

 普段より幼く思える穏やかな寝顔には、普段の冷たさはかけらもなかった。
 起こしたくないなと思う。
 このまま彼女を見ていたいな、と秋の日の中で考えた。
 肋骨の奥が、優しく蕩けるような、そんな感覚。

 もっと彼女のいろんな表情が見てみたい。
 はしゃいで笑う三花はどんなふうなのだろう。
 その氷の仮面の向こうに、君は何を隠しているんだ?



 とても興味が湧いてしまった。




 そのせいもあってか、翌週、谷垣とともに訪れたイスタンブールで蚤の市を発見したとき、すぐに車を止めさせた。
 車を降り、人混みの中に足を踏み入れる。

 騒つくアジアとヨーロッパ、アラビアの雰囲気が混じり合う独特の雰囲気のなか、俺は視線を巡らせた。
 あの人が好きそうなものはあるだろうか。

「社長、待ってくださ……アンティークバザール? なにをするのです」

 谷垣とすれ違いざまに彼の財布をすろうとしてきた男の手を捻りあげれば、男は眉を下げて謝罪を口にする。
 おおごとにはしたくないので手を離し、再び歩き出す。

「も、申し訳ありません社長」
「いや、こんなところで無防備にスーツで歩いている俺たちが悪い。しかし、しつこいな」

 もうひとりの手を掴めば、彼は苦笑して歩き去る。その飄々とした背中を見てつい苦笑する。

「うん、海外という感じがしていいな」

 乾いた熱射を感じながら言うと、谷垣はがくりと肩を落とした。

「わたくしめにはこういったスリルは応えます……で、ところでなにを」
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