極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「ええ。兄に知られたとき、さんざん笑われてしまって。その時もう二十歳を過ぎていたせいもあるんですが、それで……」
言ってしまった、という感情が、氷の仮面の隙間からのぞく。
少しずつ、そんな瞬間が増えている。
ところで、三花が濁した言葉の続きはきっとこうだ。
『あなたにも呆れられ笑われると思った』とか、そんなところだろう。
北里社長はあまりいい噂を聞かない。
妹に対してもそうなのか。
微かないらつきを彼に覚え、小さく息を吐いてから手にしていた紙袋をテーブルに置く。
「土産だ」
「お土産……?」
三花は訝しむように眉を微かに寄せ、それから紙袋を手に取る。
割れないよう店主に頼み、かなり丁寧に包装してもらっていたせいか、少し手間取ってからようやく、三花の白く小さな手のひらにトルコブルーの猫が乗る。
「あ」
「たまたま見かけたんだ。もらってやってくれ」
言いながら、微かに胸が騒つく。
こんな感情を抱くのは珍しくて一瞬戸惑い、それからこれが不安なのだと気がついた。
三花が喜ぶか、緊張しているのだ。
そんな俺の目の前で、三花の頬が緩む。
雪の中で開く花のように、透明感のある、綺麗な微笑みが彼女のかんばせに浮かんだ。
瞬間、線香花火が目の前で散っているかのような感覚に陥る。
世界中で三花がいちばん輝いていると、そう思った。
「可愛い」
いつもより微かに柔らかい三花の声。それがひどく甘いものに思えて。
ぴくっと手が動いて、慌てて力を抜く。
よくわからないが、反射的に彼女を抱きしめたくなっていた。