極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~

「ええ。兄に知られたとき、さんざん笑われてしまって。その時もう二十歳を過ぎていたせいもあるんですが、それで……」

 言ってしまった、という感情が、氷の仮面の隙間からのぞく。
 少しずつ、そんな瞬間が増えている。

 ところで、三花が濁した言葉の続きはきっとこうだ。
 『あなたにも呆れられ笑われると思った』とか、そんなところだろう。
 北里社長はあまりいい噂を聞かない。
 妹に対してもそうなのか。
 微かないらつきを彼に覚え、小さく息を吐いてから手にしていた紙袋をテーブルに置く。

「土産だ」
「お土産……?」

 三花は訝しむように眉を微かに寄せ、それから紙袋を手に取る。
 割れないよう店主に頼み、かなり丁寧に包装してもらっていたせいか、少し手間取ってからようやく、三花の白く小さな手のひらにトルコブルーの猫が乗る。

「あ」
「たまたま見かけたんだ。もらってやってくれ」

 言いながら、微かに胸が騒つく。
 こんな感情を抱くのは珍しくて一瞬戸惑い、それからこれが不安なのだと気がついた。

 三花が喜ぶか、緊張しているのだ。

 そんな俺の目の前で、三花の頬が緩む。
 雪の中で開く花のように、透明感のある、綺麗な微笑みが彼女のかんばせに浮かんだ。
 瞬間、線香花火が目の前で散っているかのような感覚に陥る。

 世界中で三花がいちばん輝いていると、そう思った。

「可愛い」

 いつもより微かに柔らかい三花の声。それがひどく甘いものに思えて。
 ぴくっと手が動いて、慌てて力を抜く。
 よくわからないが、反射的に彼女を抱きしめたくなっていた。
< 30 / 89 >

この作品をシェア

pagetop