極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
三章
【三章】
「土産だ」
「ありがとうございます」
この会話にもすっかり慣れ始めてきた、十月の終わりの土曜日。
初めて宗之さんにトルコブルーの猫を貰ってから、ひと月ほど経っていた。
彼からの土産と称したプレゼントは、これで五つ目。
「……これ、どちらで?」
今回彼が私に持ち帰ってきたのは、白いティーカップとソーサーのセット。
カップの内側がコバルトブルーと金で美しく彩色されている、おそらく百年ほど前のアンティーク品だ。
いままで貰ったお土産のなかで、いちばんの高値。
これはまず、蚤の市では売ってない。
「ロンドンのギャラリー」
淡々と答え、宗之さんは踵を返しリビングを出ていった。
「ギャラリーって、まさかオークション……?」
いったいいくらしたのだろう?
寒河江宗之にとっては痛くも痒くもない出費ではあるとは思うけれど。
私はサンルームに向かい、猫脚のテーブルにカップを置いてからゆったりとソファに座った。
カップをじっと眺める。深まっている秋の陽で、繊細な造りの取手がきらりと輝いた。
「どうして宗之さんはこんなことするのかしら」
ぽつりと呟く。
彼が私にお土産を買ってくるメリットは? なにもないと思う。
立場的には、私は彼の機嫌を取るべきなくらいなのだから。
まあ、ご機嫌取りなんかするつもり、一切ないけれど。
「私に好感を抱いている? まさかね」
言ってみてあまりの有り得なさに笑う。