極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「待たせた」
そのタイミングで宗之さんが木製のトレーを持って戻ってくる。トレーの上には、さっきのティーカップが二組。
「え?」
表情を出さないと決めたばかりなのに、わずかではあるけれど目を丸くしかけた。
ふたつ?
「夫婦なんだから、ひとつくらい揃いのものを持っていてもいいだろう?」
「あ……は、い」
宗之さんが私の前にカップを置く。私はいい香りに表情がほどけてしまうのを自覚する。
「いただきます」
視線を向けると、宗之さんは私をじっと見つめながら微かにうなずいた。
「おいしいです」
「そうか」
「……ありがとうございます。その、いろいろ」
「俺は好きにやっているだけだ」
不思議そうに宗之さんは言う。
私は紅茶を飲むふりをしながら、胸がなにかキラキラしたものでいっぱいになっているのを感じていた。
この人と過ごすのは、不思議なくらい心地がいい。
そして、ひとりの人間としてとても大切にされている。それがこんなにうれしいことだなんて……。
「飾ったんだな」
唐突に言われ彼の顔を見る。宗之さんは視線をリビングに向け「猫」と端的に言った。
「飾ってもいいとおっしゃったので」
可愛げのかけらもない返事をする。
先日宗之さんにもらった猫の陶器人形を、私のものと合わせてリビングの飾り棚に置いてみたのだ。
アンティークな雰囲気が家の調度品ともよく合って、ものすごく満足だった。
素直にお礼を言えばいいところだと思うけれど、うまく言えない。
「気に入ってくれてよかった」
宗之さんは微かに目を細める。小鳥でも肋骨の奥にいるのかしらと思うほど、くすぐったくてしかたない。
「ところで明日は休みだな?」
上品にカップに口をつけながら宗之さんは言った。
「え? はい」
「連れて行きたいところがあるんだ」
首をかしげる私に、宗之さんは微かに、本当に微かに微笑んだ。
◇◇◇
智之さんが連れてきてくれたのは、都内にある小さなアンティークショップだった。