極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「わあ……!」
思わず店内を見回し、感嘆の声を上げてしまう。
こんな私の姿を母が見たら目を剥いて怒ったはずだ。
けれど我慢できなかった。
まるで魔法の世界のように可愛らしい店だったから。
オレンジ系の間接照明で照らされた店内には、所せましとアンティークの小物が並べられている。
天井近い壁には振り子が揺れる柱時計がズラリと。
色とりどりのランプシェードが空間をきらめかせ、店内を幻想めかせていた。
「こんなお店があるの、知りませんでした」
「紹介制らしい」
さらりと言われてドキッとした。
つまり私をここに連れてくるために、紹介先をわざわざ探してくれたの。
「紅茶、置いておきますので。どうぞごゆっくり」
店主らしい男性はそう言って、店の真ん中にあるテーブルにチャイグラスを置く。
香辛料の香りが店内を満たした。
「おいしそう。ありがとうございます」
「あちらにグラス類もありますので、よければご覧になってください」
店主は微笑み、店の奥にある椅子にゆったりと腰かける。
私は並べられたアンティーク小物やヴィンテージ小物を隅々まで眺めながらチャイを口にした。
「おいしい」
ほう、と息を吐きながらこれもうちで扱えないかと考える。
使われている茶葉はニルギリだ。香辛料もセットにして……と、宗之さんの視線に顔を上げた。
「なんですか」
こういうの、多い気がする。じっと見つめられること……。
「いや、本当にお茶が好きなんだな」
「そうですね。趣味を仕事にしてしまいました」
「それで起業して上場までさせているんだからすごいと思う。素直に敬服するよ」
私はめちゃくちゃに目を丸くしていたと思う。
だって、あの寒河江宗之が? 敬服ですって?
「宗之さんは私以上に実績があるかと」
「俺はゼロから始めた経験はない。君はすごい」
宗之さんはとても上品にチャイを口にした。
私はかなり戸惑って、落ち着きなく椅子を立ち小物を眺めているふりをした。
――ずっと、女子供の児戯だと侮られていた。
私の努力も、部下たちの奮闘も、私の家族からすればただのお遊びで……。
なのに、認められた。あの“極氷”寒河江宗之が私を認めた。
心臓がぎゅうっと絞られたみたいに切なくて、嬉しい。
「そんなことないですよ」
そう言った私の横に彼は立ち、私の髪を撫でた。
まるで猫でもかわいがるみたいに、そっと、慈しみぶかく。
「前にも言ったが謙遜は美徳ではない」
行動と裏腹、落ち着いた声で淡々という宗之さんの顔が、うまく見られない。