極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
北里会長はその瞳に微かに怯えの色をにじませた。
キャストたちはじっと息を殺している――俺はどんな顔をしてこの会話をしているんだろうな。
会長はごくりと唾を呑む。
「ま、まさか、そんなこと」
「できます。まさか北里と寒河江が同規模だとは考えてはいませんよね」
「それは」
「あなたがた親子が……お義父さんとお義兄さんが漫然と“古き”を引き継いでいる間に、俺は世界に打って出ました。俺はあなたがたのようなボンクラとは違う」
古きを受け継ぎはした。けれどそれを何倍にも大きくしてきた。
「ぼ、ぼんくらあ?」
会長が目を丸くし、すぐに歯をむき出しにしてなにか言い返そうとした。それを遮り俺は続ける。
「あなたは三花の実力が全く分かっていないようなので。その程度もわからない経営者では、いずれ先細りでしょう」
俺は脚を組み、背筋を伸ばし彼を見据えた。
「ならば俺が使ってやるからよこせと言っているんです」
「き、貴様あ」
会長が立ち上がる。俺は半目でそれを見据えた。
「立場が分かっていないようですね。俺があなたに丁寧に接していたのは、三花の父親だからです」
鯉のように口をぱくぱくさせる会長に俺は言葉を続ける。
「さっきは“よこせ”と言いましたが、別に構わないのですよ。今この瞬間に、あなたから全てを奪っても」
立ち上がり、会長を睥睨した。
「お約束いただけますね?」
会長は無様な「ぐぬう」と返事のような、そうではないような、曖昧な鼻息を漏らしソファに座り込む。
俺はそれを一瞥し「失礼」と踵を返し、VIPルームを出た。
脚を早め、車に向かって歩き出す。
とても三花に会いたかった。