極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
私はしどろもどろに、感情のままに、訥々と順番もめちゃくちゃに思い浮かんだまま今まで抱えてきたことを吐露した。父のこと母のこと。感情を出す娘はいらない、北里の娘としてふさわしくないと言われたこと。信用できない兄のこと。ここまで感情を顕わにするなんて生まれて初めてだった。梨々花にすらここまですべてをさらけ出したことはない。
けれど安心する体温に、私を甘やかしてしまうぬくもりに、ついつい心がほどけてしまって。
「頑張ったな、三花」
宗之さんは私の頭に頬を寄せ、後頭部を撫で言う。
「これからは俺に頼ってくれ。一緒に支えあっていこう――夫婦なんだ」
その言葉にさらに涙が出て苦しい。
「なあ、三花。さっき君は “北里の娘” と言ったけれど、君はもうそんな存在じゃない。俺の妻だ、 “寒河江三花” なんだ」
目を瞠る。視界の宗之さんは涙で滲んで見えた。
なにか言おうとするのに、しゃくりあげてしまって言葉にならない。
「これからは必ず守るから、どうか俺を頼ってほしい」
彼はそう言って、私の頭やこめかみにキスを落とす。顔を上げると、頬を包まれ唇に触れるだけのキスをされた。少し離れて見つめあうと、宗之さんは幸福そうに目を細める。
「ずっと考えていたんだ。こんなふうに三花に甘えられたら、どんなに幸せだろうかと」
後頭部を押され、彼の肩口に優しく押し付けられた。そのまま髪の毛を梳くように撫でられる。彼の穏やかな呼吸を感じる私の頭にほおずりをして、彼は口を開いた。
「三花。教えてほしい」
目線を上げると、嘘みたいな表情を浮かべた彼と目が合う。心細そうに微かに微笑んだ、自信のない面持ちだった。
「宗之さん……?」
「君のことを愛していると確信してから、君に触れるたびに期待交じりの予想を抱くようになってしまったんだ。君も俺を愛してくれているんじゃないかって期待だ」
ぴくっと肩を揺らし彼の揺れる瞳を見つめる。
「俺の思い上がりやうぬぼれでないと信じさせてくれ」
信じさせる、だなんて。 “極氷” の口から出たとは思えない言葉……。
「私……」
宗之さんは覚悟を決めるように私を抱きしめなおす。
優しくというより、縋りつくようにかき抱かれた。
彼の心音が聞こえる、どっどっと、強すぎるほどの音は彼が緊張しているその証左。
「……宗之さんも緊張するなんてことあるんですね」
「人生で一番緊張している」
苦笑交じりに言う彼の唇に自分からキスをする。恥ずかしすぎてすぐに離れ、顔を両手で覆った。宗之さんはしばらく硬直したあと、大きく大きく息を吐いた。
「なあ三花。言葉でも欲しい」
「恥ずかしいです、無理」
「手も外してくれ。顔が見たい」
「嫌です」
「三花」
私を甘やかす蜂蜜みたいな声が落ちてくる。
半泣きになりながら手を離せば、蕩ける微笑みを浮かべた宗之さんと目が合う。
彼は私の目元にキスを落とし「かわいい」と目を細める。
「とてもかわいいな、君は」
「そ、そんなこと」
「ある。俺のお姫様」
そんなふうに言われると、どんな顔をすればいいのか、どう反応すればいいのか、なにもわからなくなってしまう。
「愛してる」
何度も唇に触れるだけのキスが繰り返される。目の奥がひどく熱くて。止まりかけていた涙がまたあふれ出る。
「頼む。三花」
優しく言われ、切なさとときめきでどうしようもなくなる。
「私も」
なんとか出した声は細く震えていた。