極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「私も好き、大好きです……いつのまにか、本当にいつの瞬間かわからないんです、でも私、あなたに恋していたの」
うん、と宗之さんは目元を綻ばせ私の涙を指先で拭う。
「俺も同じだ。いつ俺は君に恋をしたんだろう」
「恋って難しいですね」
「そうだな」
至近距離で顔を見合わせたまま、私たちは笑いあう。その合間にキスを重ね、手をつなぎ、抱きしめあい、額を重ね幸福をわかちあう。
あったかいな、と思った。
この人はとても温かい……。
そうしているうちに、ようやく気が付いた。
「あの、宗之さん」
「どうした?」
くすぐるような声に思考を放棄してしまいそうになりながら、私は顔を上げる。
とたんに甘やかなまなざしに心を蕩かせかけるのをぐっと我慢し、口を開いた。
「私、嫌がらせは宗之さんの恋人がしたことだと思っていたんです」
「いないけどな。俺にいるのは可愛い妻だけ」
指を絡ませた左手を持ち上げ、彼は私の指に唇を落とす。結婚指輪が嵌まった薬指だ。
「あ……」
「はは、真っ赤だ。本当に初心だな」
かわいい、と言いながら宗之さんは私を抱きしめなおし続けた。
「というか、話を統合すると君は犯人をかばおうとしていたよな。どれだけ人がいいんだ」
「そんなつもりではありません」
「あるだろ? まあたぶん、そういうところが君が部下たちに慕われる所以なんだろうな」
そう言われて胸のあたりがキュッとした。
そんなふうに褒められるのは初めてだった。私は照れをごまかすように咳払いをして続けた。
「とにかく、全部私の独り相撲でした。ということは、あの手紙や嫌がらせは一体誰の仕業かというのが気になるのです」
そう言うと、宗之さんは深く息を吐いた。
「知らなかったとはいえ、君には苦労をかけた。実は俺にも心当たりがあるんだ」
「え?」
顔を上げると、「すまない」と宗之さんは私の頬を撫でた。
「そんな顔をするな」
私は自分の頬を手で撫でた。一体、どんな顔をして……でも一瞬、元恋人などの存在を想像してしまったのだ。きっと感情を丸出しに、切ない顔でもしていたのだろう。
少し前の私なら、そんなみっともないこと……と思ったはずだ。けれど、彼が私をくるんと包むように大切にしてくれるから、恥ずかしいけれど、自分を見苦しいとまでは思わなかった。
「愛してる。何度も言っているように俺には君だけだ」
そう言ってから、イギリス留学時代につきまとわれていた話を聞き目を丸くする。
「そんなことが……」
「グループミーティングと聞かされて行ってみたら彼女しかいなかったこともあった。確か老舗ホテルのアフタヌーンティーだ。本人としてはサプライズデートのつもりだったらしい」
「ああ、それでアフタヌーンティーの意匠の手紙が……」
「おそらくはな。害はないと放置していたが、君に接触しようとしているなら話は別だ。こちらで対処する」
「お忙しいのに申し訳ないです。そういうことであれば、私のほうで弁護士に連絡をして対処いたします」
なにしろあの溌溂とした女性……師匠さんらしい、その人に遠慮していただけなのだから、そうではないと分かればためらうことはない。
「君からも動いてもらったほうがいいとは思うが」
そう言って彼は私の髪の毛をひとふさすくい、そこに唇を押し当てた。
「必ず守る」
その瞳に嘘はない。微笑んで頷くと、唇が重なった。