極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
◇◇◇
クリスマスマーケットとは、ちょうどアドベントの時期……つまり十一月の終わりごろからクリスマスイブにかけて行われている伝統的なお祭りだ。屋外の広場に出店や移動遊園地がやってきて、クリスマスに向けた買い物や、屋台での飲食、あるいは単純にお祭りを楽しむイベントで、最近は日本でもこの時期になると見かけるようになってきた。
今回宗之さんの誘いでやってきたのは、スイス北東部にある街でのものだった。
「わあ……!」
広場の中央に設置された大きなモミの木には、金一色で装飾が豪奢に施されていた。
すっかり暗くなった空に輝く電飾をはじめ、リボンやガラス製の丸いオーナメントも上品なゴールドで統一されている。
「綺麗」
分厚い真っ白なコートを着込んでつぶやいた声は、白い息と一緒にキンと冷えた空気に霧散していく。
「寒くないか?」
横から宗之さんに肩を抱き寄せられ、こくんと頷いた。
彼もまた、真冬のスイスにふさわしい厚手のコートを着ている。なにしろ氷点下だ。
今日は現地でクリスマス当日、マーケットは最終日だ。
宗之さんは吉岡とどう話したのか、気が付けば私は年末年始、かなり長い休みを取ることになっていた。
『社長は会社設立以来、正月だろうと夏だろうと、ろくに長期休暇を取られていないんですから』
と過保護に説得され、今回は皆に甘えることにした。とはいえ、少しは持ち帰り仕事があるのだけれど、それはそれ。三十日までをここスイスで過ごした後、新年はロンドンでいくつかパーティーに出席する予定になっていた。
あたりを見回すと、おとぎ話にでてくるような中世的な街並みが幻想的にライトアップされている。
屋根に雪が積もった木組みと漆喰のドールハウスのような家には、落ち着いた色彩の壁画が描かれている。
『雰囲気としては、“貴婦人と一角獣”に近いかな』
目にした宗之さんに言われ頷いた。中世宗教画風の色彩と描き方だ。
遠くを見れば、石造りの塔がかわいらしい教会も見える。
ほのかにオレンジ色の街灯がそんな童話のような街並みをほんわりと照らしていた。
この街はここだけでなく、街全体がこんなふうな街並みのようだった。
到着するなり歓声を上げた私に『君が好きそうだなと思って』と宗之さんははにかんで教えてくれたけれど、その通りだ。
こんな可愛らしい街、あますところなく見て回りたい。
「ありがとうございます、宗之さん。こんなかわいい街に連れてきてくださって」
宗之さんは何も答えず、そっと私のこめかみにキスを落とした。
冷えて清廉な空気の中、楽しげなざわめきと軽快な音楽が奏でられている。
ドイツ語圏ということもあり、出店に並ぶ飲食物はドイツ風のものが多い。
宗之さんと温かなグリューワインを買い、並んで飲みながら歩く。真っ赤なマグには雪だるまが書かれていてとてもかわいい。
蜂蜜やオレンジ、リンゴを加えた甘い赤ワインに、グローブやシナモンといったスパイスが効いており、身体の芯からぽかぽかと温まる。
「ああ、踊りだしてしまいそう」
聞こえてくるアコーディオンの音に胸が躍る。
「踊ったらいい」
宗之さんは広場で楽しげに踊る人の輪を見て笑う。
「ふふ、恥ずかしいです」
「そうか。じゃああとでふたりで踊ろうか」
私はきょとんとしてから笑って頷いた。宗之さんもそんな冗談を言うのね。
クリスマスマーケットとは、ちょうどアドベントの時期……つまり十一月の終わりごろからクリスマスイブにかけて行われている伝統的なお祭りだ。屋外の広場に出店や移動遊園地がやってきて、クリスマスに向けた買い物や、屋台での飲食、あるいは単純にお祭りを楽しむイベントで、最近は日本でもこの時期になると見かけるようになってきた。
今回宗之さんの誘いでやってきたのは、スイス北東部にある街でのものだった。
「わあ……!」
広場の中央に設置された大きなモミの木には、金一色で装飾が豪奢に施されていた。
すっかり暗くなった空に輝く電飾をはじめ、リボンやガラス製の丸いオーナメントも上品なゴールドで統一されている。
「綺麗」
分厚い真っ白なコートを着込んでつぶやいた声は、白い息と一緒にキンと冷えた空気に霧散していく。
「寒くないか?」
横から宗之さんに肩を抱き寄せられ、こくんと頷いた。
彼もまた、真冬のスイスにふさわしい厚手のコートを着ている。なにしろ氷点下だ。
今日は現地でクリスマス当日、マーケットは最終日だ。
宗之さんは吉岡とどう話したのか、気が付けば私は年末年始、かなり長い休みを取ることになっていた。
『社長は会社設立以来、正月だろうと夏だろうと、ろくに長期休暇を取られていないんですから』
と過保護に説得され、今回は皆に甘えることにした。とはいえ、少しは持ち帰り仕事があるのだけれど、それはそれ。三十日までをここスイスで過ごした後、新年はロンドンでいくつかパーティーに出席する予定になっていた。
あたりを見回すと、おとぎ話にでてくるような中世的な街並みが幻想的にライトアップされている。
屋根に雪が積もった木組みと漆喰のドールハウスのような家には、落ち着いた色彩の壁画が描かれている。
『雰囲気としては、“貴婦人と一角獣”に近いかな』
目にした宗之さんに言われ頷いた。中世宗教画風の色彩と描き方だ。
遠くを見れば、石造りの塔がかわいらしい教会も見える。
ほのかにオレンジ色の街灯がそんな童話のような街並みをほんわりと照らしていた。
この街はここだけでなく、街全体がこんなふうな街並みのようだった。
到着するなり歓声を上げた私に『君が好きそうだなと思って』と宗之さんははにかんで教えてくれたけれど、その通りだ。
こんな可愛らしい街、あますところなく見て回りたい。
「ありがとうございます、宗之さん。こんなかわいい街に連れてきてくださって」
宗之さんは何も答えず、そっと私のこめかみにキスを落とした。
冷えて清廉な空気の中、楽しげなざわめきと軽快な音楽が奏でられている。
ドイツ語圏ということもあり、出店に並ぶ飲食物はドイツ風のものが多い。
宗之さんと温かなグリューワインを買い、並んで飲みながら歩く。真っ赤なマグには雪だるまが書かれていてとてもかわいい。
蜂蜜やオレンジ、リンゴを加えた甘い赤ワインに、グローブやシナモンといったスパイスが効いており、身体の芯からぽかぽかと温まる。
「ああ、踊りだしてしまいそう」
聞こえてくるアコーディオンの音に胸が躍る。
「踊ったらいい」
宗之さんは広場で楽しげに踊る人の輪を見て笑う。
「ふふ、恥ずかしいです」
「そうか。じゃああとでふたりで踊ろうか」
私はきょとんとしてから笑って頷いた。宗之さんもそんな冗談を言うのね。