極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
「君がほしい」
「私、もう、あなたのものです」
そう言ったあと、ふと思い出して続けた。
「敬語ももう、やめる」
私の敬語は、あなたとの距離を取るためのものだったから。だから、やめる。
「そうか」
宗之さんはさらりと私の髪を撫で、リボンを解く。頭や額にキスが繰り返される――心地よい柔らかな温かさ。
胸が張り裂けそうなくらい、切なくて苦しい。彼のことが愛おしいから。
抱きっぱなしだったテディベアを、宗之さんがそっと手に取る。そうして指輪を外し、私の結婚指輪に重ねてつけた。
サイドテーブルに置かれたテディベアをちらりと見ると、宗之さんが「ふ」と笑ってベアを寝かせる。
「こいつには刺激が強い」
そう言って私の額にキスをする。どきどきとした鼓動が大きすぎて、彼にも聞こえちゃうんじゃないかと思う。
ゆっくりと私の額から唇を離した宗之さんが、私の顔をのぞきこみゆったりと笑う。その笑顔に、胸の奥からホッとした。相変わらずドキドキはしているけれど、……彼に任せておけば、きっと大丈夫。
安心して左手をかざせば、暖炉の炎でダイヤがきらりと温かく輝く。
「綺麗……」
呟いた唇に、キスが落ちてくる。触れるだけのキスを角度を何度も変えて落とされ、やがて彼の舌が私の口内に割り入る。少し分厚い彼の舌が、優しく私のものに絡み、ゆったりこすり合わされると、頭の中がだんだんぼやけてくる。私のすべてを彼に明け渡し、暴いてほしくてたまらなくなる。
「好き」
キスの合間にそう告げると、至近距離にあった宗之さんの瞳が揺れる。それから彼は蕩けるように笑った。胸がキュンとする。愛おしいと思う。
「愛してる、三花」
宗之さんの少し掠れた低い声は、まるで蜂蜜のようにとろりと甘い。再び唇が重なったかと思えば、今度はさっきとは違い、少し激しいキスになった。貪られている感覚が切なく息苦しく、でも求められていることがとても嬉しくて、彼の広い背中にしがみつく。
下唇を甘噛みされ、ようやく唇が離れたかと思うと、今度は手を繋がれソファに押し付けられた。
首筋を彼の唇がなぞる。
「ん……」
自分の口から出たとは思えない、上ずって蕩けた声。いや、どこかに媚びさえ滲ませていた――もっと、もっと可愛がって、と甘える子猫のように。
宗之さんは顔を上げ、私を見下ろしくっきりとした喉仏を上下させた。
「想定以上にたまらないな」
「なにが……?」
「君の甘える顔」
キスを繰り返しながら、お互いの体温を分かち合う。
「熱いな、君は」
宗之さんが私にほおずりをしながら言った。私も頷く。あなたもとても、温かい。
「私もあなたも、氷なんかじゃなかったね」
そう言うと、宗之さんは「ふ」と笑った。
「最初から言っていただろ? 君は温かいと」
その言葉にあのお見合いの日を思い出す。
満開の桜、私に触れた男性らしい指先――ああ、あの日も彼は温かだった。
宗之さんは深く長く息を幸福そうに吐き出しながら、私をそっと抱きしめなおす。
キスを重ねるうちに、私と彼の体温が入り混じっていくのを感じる。
このまま熱く溶けてひとつになれたらどんなに素敵か、なんてことまで考えた。
私を覆っていた氷が、とろとろと溶けていく。
ああ、私の氷は、自分を守るためのものだったのね。
でももう、硬く凍り自らを閉ざす必要はないから――私は彼に守られているから。
同じように、私も彼を守りたい。この感情が愛なのだろうか。
だとすれば、なんてあったかい。
「大好き」
ぽろっとまた涙がこぼれる。分かち合う人がいる幸福で、胸が苦しい。
「愛してる、三花」
やがて彼の声から余裕が消えていく。ただお互いを求めあい、夜が更けていく。