極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
朝食というにはずいぶん遅い時間の食事のあと、私は宗之さんに城内を案内された。
「わあ、ここ……」
そのうちのひとつ、大広間で私は目を瞬く。まるで童話に出てくるダンスホールのような豪奢な空間……。
「昨日、言っただろう? 踊ろうと」
「ここのことだったの?」
私が笑って振り向くと、宗之さんは私に一歩近づき軽くお辞儀をしてくる。
目を瞬き、それがダンスの誘いだと気が付いた私も頷き返す。
彼は私の手を取り、ワルツのステップを踏んだ。
くるくると回るように踊るウインナーワルツだ。
小さく彼が旋律を歌う。彼が歌ったことに驚くとくるりと大げさに回転された。
「きゃあ!」
「笑うな。あまり歌はうまくないんだ」
「ええ、そんなこと」
くすくすと笑う。極氷なんて呼ばれているのに、何でもできて自信満々なのに、歌は苦手なの。どうしてか愛おしさが増す。
「じゃあ私にだけ聞かせてね」
「そうするよ」
踊りながら宗之さんは「そういえば」と口を開いた。
「少し前、君の父親に会ったんだ。たとえなにがあろうと君の会社には手を出さないと言質をとっておいたから、安心してくれ」
私は唐突な報告に戸惑う。そして微笑んだ。
知らない間も、ずっと守ってくれていたのね。
「ありがとう」
「礼を言われるほどのことじゃない。ああ、例の嫌がらせももうないと思う。またなにかあれば言ってくれ」
宗之さんはさらりと言って、優雅にステップを踏む。
私はまぶしいものを見る心地になりながら、彼に合わせた。
やがてお互い足を止め、挨拶をしようとした私を彼は抱き寄せる。
「必ず守る」
その言葉が胸にしみる。顔をあげると唇が重なった。
「いつか、君のバレエも見てみたい」
そう言われてなんだか泣きそうになる。
また踊ってみたいと、そう思った。