極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
これ以上、こんな一族に縛られて生きたくない。
私が商社を立ち上げ、様々な国の茶葉を輸入することにしたのは、そんな理由からだった。紅茶の本場イギリスをはじめ、フレーバーティーはフランス、昨今のアジアブームも手伝い台湾茶も好調だ。
もっとも、ひとつでも失敗すれば、いま兄が経営に携わっている大手総合商社に合併されてしまう。それでもいいからと始めた仕事だった。
幸い軌道に乗り、今までやってきた。上場だって目の前なのだけれど……。
『三花。お前は北里家になんの貢献もしていないんだ。そろそろ少しくらい役に立て』
父がそう言ったのは、わずか一ヶ月前。
どこか傘下の会社の経営でもさせられるのかと思いきや、あっという間に見合いの話をまとめて来た。
父にとって私は駒でしかない。
ひとりで会社を立ち上げ、軌道に乗せたことすら、女子供の児戯程度にしか思われていない。
けれど断れば、会社がどうなるかわからない。
創業わずか数年の芽吹いたばかりの会社など、父は潰そうと思えばいまこの瞬間にでも捻り潰すことができる……。
だから私は見合いの話をのんだ。
おそらく私と相手の感情など意味がない。
見合いをして『このかたとはちょっと』と婚約を断ることもできないだろう。
これはもう結婚までを、家と家、企業と企業のつながりを想定して決まった話なのだ。