極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~

 一時間ほどで到着したのは、美しい運河が流れる街に建つレンガ造りの屋敷だった。
 尖った屋根やゴシック調の細かい彫刻などが施されたヴィクトリアン様式のカントリーハウス。

「ここは?」
「以前から保有していた別荘だ」

 なんでもイギリスに嫁いだ親戚の遺産らしい。車から降りつつ話を聞く。

「歩けるか?」
「もう大丈夫。ありがとう」

 そうか、と宗之さんはホッとした表情を浮かべる。

「もうすこし華やかな時期に披露したかったんだが、ホテルに戻るのもなにかと気ぜわしそうでこちらにしたんだ。今日は早く休んだほうがいい」

 たしかに、カウントダウン直前のロンドン市街は相当な人混みだろう。交通規制や渋滞でホテルに戻るのが遅くなるのは覚悟していたのだった。

「ここはいつも管理と、最低限の生活の準備はしてあるから」
「……その、心配をかけてごめんなさい。つい感情的になって」

 もっといいあしらいかたがあったでしょうに、と内心自分にあきれていると、宗之さんは「いや」と首を振る。

「君は一切悪くない。あの男に関しては俺のほうで対処しておく」

 車内で簡単に事情を説明しておいたのだ。私は首を振った。

「いえ。いまさらだけど、サイラスにはとっても腹が立ってきたの。私を怖がらせたこと、たっぷり後悔させてようと思う」

 そう言うと、宗之さんは微かに目を細め肩をすくめた。

「無理はするなよ」
「ええ」

 そう約束すると、宗之さんはようやく眉を開いた。

「そういえば、宗之さん。華やかな……って?」
「庭の薔薇がきれいなんだ」
「わあ、見てみたかった」

 門扉を運転手が開き、お礼を言って中に入る。

「今日はふたりきりだ。構わないか?」
「うん」

 私の後ろで門扉が閉じられる。
 玄関まで続く石畳を歩きながら、庭を見渡す。伝統的なイングリッシュガーデンだ。確かに薔薇のころはとても華やかだろう。
 室内に入ると、すぐさま抱きすくめられた。背中にある彼の大きな手が微かに震えている。さっきまで、堂々としていた強い人の態度だと思えない。一体何が、と慌てて彼を呼ぶ。

「宗之さん? 体調でも」
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