極氷御曹司の燃える愛で氷の女王は熱く溶ける~冷え切った契約結婚だったはずですが~
『ああもう、ミツカのことが心配で心配で……っ。誘拐のこともそうだけれど、あなたひとりで頑張りすぎるから、しばらくわたし日本にいてサポートしてあげる』
『ええっ、キャシー?』
『キャシー、わかるわ。三花って凛としているのだけれど、守りたくなるのよね』
『梨々花までなに?』
梨々花とキャシーが笑いあう。私の知らないところで、二人はなにやら意気投合したらしかった。
◇◇◇
グループ会社の重役についてしばらく経った、春の盛りのころ。
私の本業、茶葉の関係で都内にある老舗ホテルのカフェテリアを訪れたところ、秘書の谷垣さんを連れた宗之さんに会った。今日も彼の手首で、私からのプレゼントの時計が時間を刻んでいる。
「あら、どうしたの?」
「今度ここであるレセプションの関係で」
そう説明しながら、私の背後をちらちら気にしている。
不思議に思って振り向けば、新しい秘書がにこにこ立っているだけだ。少し年下の男性秘書だ。
「どうしたの?」
「吉岡さんとキャシーは」
「ああ、吉岡くんには北里のほうの秘書課を任せたの。有能だからね。キャシーは会社に残ってくれているけど……?」
ほーう、と宗之さんはなぜか目を細める。首を傾げつつ「紹介するわ、私の夫」と秘書に宗之さんを紹介する。
「はじめまして」
頭を下げる秘書を宗之さんはじっと見たあと、フッと笑い腕を組む。
「妻は優しいだろう?」
「え? ええ。とても“氷の女王”だなんて言われているとは思えない優しい方で、それからお綺麗で可愛らしくて」
「だよな」
宗之さんはなぜだか私の腰を引き寄せ「車まで送る」と微笑む。
「え?」
「いや、会社までドライブがてら俺の車で送ろう」
不思議に思いつつ、秘書に車で戻るよう指示を出した。
ふたりで地下の駐車場まで降りると、宗之さんは唇を尖らせ言う。
「あの秘書、君のことをキラキラした目で見ていたぞ。綺麗だとか、可愛いだとか」
誰もいない駐車場で、彼の声が微かに響く。
「ええっ? まさか。リップサービスよ」
そう答えたあと、私の腰を抱いたりここまで連れてきたのは彼に対するけん制なのだと気が付いて目を瞬く。
「もう、なにをやっているの」
見上げた先で、宗之さんはちょっと拗ねた顔をする。 “極氷” な彼がこんなふうになるのは私の前限定だ。甘えてくれているのかな、と胸がくすぐったい。ついくすくすと肩を揺らすと、宗之さんは私を抱き寄せちゅっとこめかみにキスをした。
「君は魅力的なんだから、気を付けてくれ。君がいつも笑顔でいるのは好ましいが、いちいち男どもにけん制しなくてはならないこちらの身にもなってほしい」
「魅力的? そうかしら」
「そうに決まってる」
宗之さんのキスがこめかみや額にも落ちてくる。私もつい甘えかえしてしまいつつ、はっと思い出して「あのね」と話しかけた。
「なんだ?」
「午前中、病院へ行ってきたの」
「病院⁉」