雨音。〜私を避けていた義弟が突然、部屋にやってきました〜
「私も、伶が好き」

 やっと言えた。
 長い間、隠していた気持ちが。
 想いとともに涙があふれてくる。
 そんな私を破顔した伶が抱きしめた。
 私もその大きな背中に腕を回す。彼の胸に顔をうずめて、喜びに浸った。

「親父たちの了承は取ってあるから」

 そうささやかれて気づいた。
 そういえば、婚姻届にはもう両親の名前が書いてあった。
 改めて聞かれたことはなかったけど、お母さんには私の気持ちがバレていたに違いない。

(お母さん、わかってて電話してきたのね!)

 伶が私のところに来ると知っていたのに、敢えて事実をぼやかして伝えたのだ。私の気持ちを揺さぶろうと。
 にんまり笑う母の顔が浮かんだ。

「瑞希……」

 名前を呼ばれて、顔を上げると、キスが落ちてきた。
 そっと触れた唇は、いったん離れて、また押しつけられる。
 確かめるように何度も何度も重ねられた。
 だんだん息が苦しくなってきて、唇を開くと、その隙間から舌が忍び込んでくる。
 伶の熱い舌が私の中にいて、ここそこを探る。

「んっ」

 上顎を舌でなでられて、くすぐったいような気持ちいいような不思議な感覚が湧き起こる。
 声が漏れ出た。
 それを合図に、伶が私の身体の線をなぞるように触ってきた。
 ソファーに押し倒される。

「瑞希、もう我慢できない。お前が欲しい……」

 熱い息を吐きながら、伶が私の耳もとに口づける。そのまま、首筋に鼻を押しつけて、匂いを嗅ぐようにするから、私は身じろぎした。
 彼の大きな手が私の胸に触れる。 

「待って、待って。私……初めてなの」

 伶とそうなるのは嫌ではない。
 でも、展開が急すぎてスピードを緩めてほしかった。
 私がそう言うと、伶はくっと喉の奥を鳴らした。
 驚いたように、私を見つめる。

「お前、彼氏いただろ?」
「うん、一瞬だけね。でも、だめだった。だって、やっぱり伶が好きだったから」
「……すげー、うれしい」

 伶は私の髪の毛を梳くようになで、顔をほころばせた。
 今日はいろんな顔を見せてくれる。
 そのたびにときめきが止まらない。
 照れくさそうに伶がつぶやいた。

「俺だって初めてだ」
「うそ、あんなにモテるのに?」
「お前しか好きじゃないのに、なんで他の女を抱くんだ?」

 ナチュラルな殺し文句に顔が熱くなる。
 そのうえ、深いキスをしたあと、ねだるように言ってきた。

「なぁ、だめか? 早く瑞希を俺のものにしたいんだけど?」

 そう言われて、逆らえるはずがない。



< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop