あの桜の木の下で
翌日、俺たちは伊東甲子太郎の行動を追い、彼がどこで何を企んでいるのかを必死に調査していた。だが、まるで煙のように彼の行動は掴めない。それでも、焦燥感は次第に強まり、何か大きな決断を下すべき時が近づいていると感じていた。

その夜、ついにその時が訪れた。

油小路で、伊東が何かを企んでいるとの情報が入った。彼の行動が怪しく、もはや新選組の中で彼がどのように振る舞っているのかを追い詰める時が来たのだ。

「これ以上、伊東を放置することはできない。」土方さんの言葉は厳しく、怒りを含んでいた。

「やつが裏切りを果たす前に、必ず仕留める。」近藤さんは冷静に言ったが、その目は鋭く、深い決意を感じさせるものだった。

「分かりました。」俺は答えた。胸が高鳴る。ついに、伊東との決着をつける時が来たのだ。

油小路に集まった新選組の隊士たち。俺たちは闇に紛れて動き、伊東を討つべく準備を整えていた。しかし、現場に着いた瞬間、俺はその空気が違うことを感じた。何かが、明らかにおかしい。

「敵の気配が多すぎる……。」そうちゃんが低い声で言った。

その通りだった。油小路には、見覚えのない多くの者たちが集まっている。伊東の手先だろうか、まさかここで大規模な戦闘になるとは予想していなかった。

「一体どうなっている……?」俺は疑問を感じながらも、周囲を警戒し、進む。

その時、背後から急に響く足音。気づくのが遅れたが、振り返った瞬間、そこには伊東甲子太郎が立っていた。

「ようやく来たな。」伊東は冷ややかな笑みを浮かべていた。その目には何か冷徹なものが感じられる。

「伊東……!」俺は一歩前に出る。

「春樹、そうちゃん。待っていたぞ。」伊東の言葉は、どこか楽しげに響いた。「だが、今日はお前たちと戦う気はない。」

その言葉に、一瞬違和感を覚えた。

「どういうことだ?」土方さんが鋭く問いかける。

「簡単なことだ。」伊東は軽く肩をすくめた。「私は、新選組からの脱退を決めた。それが俺の選んだ道だ。」

その言葉が放たれると同時に、周囲の敵が一斉に動き出す。伊東の裏切りは確定した。それでも、なぜ今なのか、そして彼の真意が見えなかった。

「お前、どこまでやるつもりだ!」土方さんが叫び、周囲に警戒を強める。

「戦いの終わりはもう近い。」伊東は冷ややかに言った。「今日が、お前たち新選組の終わりの日になるだろう。」

その瞬間、油小路は一気に戦場と化した。伊東の仲間たちが次々と新選組に襲いかかり、俺たちは必死に反撃を開始した。しかし、その戦いは予想以上に激しく、敵の数も多い。

「春樹、しっかりして!」そうちゃんの声が、俺の耳に響く。

「うん!」俺は必死に敵を振り払いながら答えた。

だが、戦いは長引く一方だった。油小路での戦闘が続く中、俺たちは次第に伊東の目的がただの裏切りではなく、新選組を完全に壊すための計画だったことに気づく。

「やつの狙いは、京の街の混乱を作り出すことだ。」土方さんが口を開いた。「そうすることで、幕府の信頼を揺るがせ、俺たち新選組を追い込むつもりだ。」

その言葉に、俺たちはさらに必死に戦うしかなかった。新選組の名誉、そして自分たちの誇りを守るために。

油小路での戦いは壮絶を極め、ついには伊東とその仲間たちを討つことができた。しかし、同時に新選組は大きな傷を負い、その後の行動に大きな影響を与えることとなる。

伊東の裏切り、そしてそれに続く油小路での戦闘は、俺たち新選組にとって、忘れがたい出来事として深く刻まれることとなった。

その後、俺たちはさらに警戒を強め、新選組としての戦いを続けることを誓い合った。それでも、伊東の裏切りがもたらした影響は、次第に新選組を分裂させ、未来を揺るがすこととなるのであった。

油小路事件の後、新選組の運命は大きく変わることとなる。伊東甲子太郎の裏切りと、それに続く戦いが、新選組にどれだけの試練をもたらすのか、それはまだ誰にもわからなかった。
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