ワケアリ無気力くんが甘いです


──っどうしよう。


扉を開けようにも鍵を閉められては開くことはなく、扉の軋む音だけが物置内に響くだけ。


それに……臭い。


生温い空気の中、ペンキやらスプレー缶の独特な匂いが充満していて、鼻をつまんでもなにも緩和されない。
こんなとこ、長時間いたらどうなるか……早く出ないと……。

鍵は開かない。物置を覗いただけで……こんなお約束な展開に自分が陥るとは微塵も想定していない。
このご時世でも、現実に閉じ込めなんてまだ存在するんだ、なんて変に頭が冷静になり、周りを見渡してみる。窓はもちろんあるけれど、工具棚が邪魔をしているし、そもそも高さ的に届かない。


ということは、出口がないということ。


それに今は文化祭中だから、校舎裏のごみ収集コンテナには行っても、コンテナから離れている物置に誰か来ることはほぼない。
物音を立てたところで、誰にも届かず気付かれず、音楽や声でかき消されるだけ。


「あっ……スマホ!」


連絡すれば済むと思いきや、そんなうまいこといかないらしい。私の鞄丸々がないから。
多分押し込まれた時、鞄だけ外に出されたんだと思う。
< 134 / 153 >

この作品をシェア

pagetop