ワケアリ無気力くんが甘いです
▶マスクの下
カミングアウト
▶▶
家庭科の調理実習で作った、マフィンの香りが教室を包む。
「ヤコちゃん上手だね!」
「そうかな?かんちゃんのも可愛いよ」
机を合わせ、お弁当の横に置いてある袋入りのマフィン。
かんちゃんのマフィンはカラフルなチョコだらけで、私のマフィンは猫の顔が書かれている。これは食後のデザート用。
「ヤコちゃん、どのくらい作った?私3個残ってるよ。全部同じ見た目だけどっ」
「私も3個あるよ。クマとウサギと、もう1個同じ猫バージョン」
ほらほら、と机に置いてお互いに見せあいっこする。
すると、かんちゃんの目が輝いた。
「んー!ヤコちゃん1個交換をお願いいたします」
両手でマフィン献上するかんちゃん。
その手からマフィンを受け取り、自分のマフィンを乗せる。
「はい、ウサギあげるね」
「やったぁ!可愛い!ありがとうヤコちゃんっ」
両手に乗るマフィンに、かんちゃんはより目を輝かせ顔を近付けた。袋からはあまりわからないと思うのに匂いまで嗅いでる……。