推しが近所に住むなんて聞いてません!
「私、猫屋くんが好き..!」

大きな声でそう告げると猫屋くんは「…え」と小さく声を漏らす。

「私、猫屋くんが大好き!デビューした時からずっとずっと猫屋くんだけを追いかけてた。今までファンじゃないいなんて嘘ついてごめん。最初は急に猫屋くんが目の前に現れて、ファンと関わりたくないって言ってたから、わざと隠してた。推しと近づきたい、そんな気持ちだった。」

猫屋くんは真剣な面持ちで真っ直ぐこちらを見つめている。

私は涙が出てきたが、話を続ける。

「でも、アイドルの時の猫屋くんとプライベートの猫屋くんは全然違った。生意気で、人のことをいつも馬鹿にしていて、おばさんとかいうし…それでも真面目で優しくて、あったかくて。気が付けば苦しいくらいあなたが好きだった。それで、それで…」

顔がぐしゃぐしゃになりながらも思いを伝えるが、うまく行かない。
猫屋くんはぷっとぷきだして

「あはは、相変わらず大人気ないよね、あんた」

「そうやってまた馬鹿にする…!」

猫屋くんは、また少し遠くを見つめて、

「…ここがわかるってことは、思い出してくれたんだ。」

と呟く。

「初めて会った時、俺が倒れてたの助けてくれたよね。薄れゆく意識の中で、微かに顔が見えたんだ。化粧もしてるし、髪型も全然あの頃とは違ってた。でもその人は俺が探している人だった。意識も朦朧としていたし、夢だと思ってた。」

猫屋くんは話を続ける。

「あとでひろ兄に女の人が俺を助けてくれたことを聞いて、会いたくなった。やっぱ夢じゃなかったんだって。それで毎日のように店で待って、ついにあんたがきたんだ。」

猫屋くんは少しだけ微笑みながら懐かしむように話を続ける。

「でも、あんたは忘れているようだった。それでも俺は別によかった。俺が覚えていればいい。俺が振り向かせればいい。その一心だったんだ。ヘンテコなあんたを見て色々素直になれなくて色々うまく行かなかったけど。」

一瞬だけ、間が開く。

そして猫屋くんは私を真っ直ぐに見つめて

「俺も由美子さんが好き。10年前からあんただけが好きだ。初めて俺の歌が好きだって言ってくれた。由美子さんのこと、ずっと、ずっと探してた。」

この時が一生続けばいい。そう思った。気が付けば私たちは近づいて抱きしめあって、何度も口付けをかわした。

猫屋くんはアイドルだ。しばらく私は推しであることを公にはできないだろう。それでも、いつか言わなければならない日が来て、困難に見舞われる日が来るかもしれない。

二人なら乗り越えられる。そう信じてーー

大きな海原は静かに私たちを見守っていた。


END

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
リクエストがあればまた続き書きます!

今後は、スペシャルエピソードとして猫屋くんサイドを少し書こうと思います。
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