推しが近所に住むなんて聞いてません!
「え、いないんですか!?」

私は、猫屋くんが居るか、バーのマスターに確認するため、電話を入れた。
しかし返事はNo。猫屋君は時々、一晩家を離れることがあるらしく、今回もそれらしい。
マスターにもその場所を明かさず、秘密だそうだ。

時刻は8時を回っていた。
正直どこに居るかは分からない。『あの場所』へ行っても会える保証はない。
それでも向かわずにはいられなかった。

なんとなく、『あの場所』に居る気がする。
その気持ちだけを頼りに迷わず私は向かった。

ーー

時刻は夜10時前。

タクシーで向かい、ようやく私はその場所に到着する。

暗い道を気をつけながら進んでいく。
一歩、また一歩と進んでいくと、歌声が聞こえてきた。

声の主は海を見て佇む男の人。
顔は見えなかったものの、その人が誰なのかはわかっていた。

「猫屋くん…!」

名を呼んで私は駆け寄る。

「え、由美子さん…?なんでここに。」

歌うのをやめ、目を丸くした猫屋くんがこちらを向く。

「やっぱり..ひまわり荘の..裏庭だったんだ。」

息を切らしながら、私はそう言う。

「な、何か用..」

猫屋くんはどうしていいのか分からないらしく、むすりとそう言う。

今回はもう逃げない。私はそう誓って大きく息を吸った。
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