結婚なんて、ゼッタイお断り!
「──離してよ!」
美桜ちゃんを取り囲む、複数人の男達。
目に映ったあの光景は、今でも忘れることができない。
「おい、大人しくしやがれ!」
「こいつが大安寺 美桜で間違いねぇよな!」
「あぁ、急いで連れて行け!これで大安寺を崩せるぞ!」
あれは敵組織の組員だろうか。
それとも単なる不良か?
でも一般人だったらまずいな。
……だなんて、そんなことを考えるよりも先に、体が動いていた。
大和と違って、俺はケンカは好きじゃない。
荒っぽい口調でしゃべるのも嫌いだ。
でも、美桜ちゃんがぐったりとその場に倒れている場面を見た途端。
俺の中の何かが切れる音がした。
「……全員、ここから生きて帰れると思うな」
そこからのことは、あまり覚えていない。
ただ、美桜ちゃんのことを攫おうとしたやつらを徹底的に締めあげた。
そして地面に倒れていた美桜ちゃんを抱き抱えたとき、俺の腕の中で気を失っている様子を見て、いろんな感情が芽生えた。
守ってあげられなかったことへの後悔。
地面に倒れているあいつらへの憎しみ。
目を瞑って気を失っている美桜ちゃんの頬に、涙がこぼれ落ちた。