結婚なんて、ゼッタイお断り!
伊織が心の底からそう言っているように聞こえて、なんだか私まで嬉しくなった。
「はい、できたよ」
「ありがとう、伊織!」
「でももう走らないでね。また転んじゃったら大変だから」
「伊織は相変わらず心配性だね」
朝九時からこの遊園地でたくさん遊んだのに、まだまだ全然遊び足りない。
でも、もうすっかり太陽は傾いている。そろそろ帰る時間だ。
楽しいことがあったあとの、終わりが近づく今のこの時間が、とても寂しいと感じてしまうくらいに、私は伊織との遊園地が楽しかったんだ。
「夕日、きれいだね!」
「……そうだね。これが、幸せっていうのかな」
伊織が静かにそう呟いた。
伊織の口から、まさか〝幸せ〟だなんて言葉が出てくるとは思わなくて、私はまた嬉しくなった。
「そうだよ!私も幸せ!これからもさ、私と伊織でいろんなことを一緒に経験していこうよ!」
「……いいの?」
「当たり前だよ!……だからね、伊織。伊織はもう少し自分に素直になりなよ。やりたいこと、したいこと、食べたいもの、もっともっと言っていいんだよ!」