結婚なんて、ゼッタイお断り!
……あぁ、なんだか泣きそうだ。
目尻に溜まった涙がこぼれそうになった、そのときだった。
「──やったぁ!僕、美桜ちゃんと同じクラスだぁ!」
「……え?」
元気でハツラツとした大きな声と一緒に、教室の扉が勢いよく開かれた。
「(この声、まさか……!)」
少し前に聞いたことのある声に顔を上げると、そこにいたのはやっぱり陽太だった。
陽太が教室の中へ入ってきた瞬間、クラスメイト達は一気に盛り上がりをみせる。
「陽太、遅刻じゃね!?」
「えへへっ!僕、朝起きるの苦手なんだよねぇ!」
「おはよう、陽太くん!」
「陽太くんと同じクラスであたし嬉しい!」
「ありがとう、僕も嬉しいー!楽しい一年にしようね!」
先生が静かにしましょうと注意しても聞かないで、みんなは遅刻してきた陽太に夢中になっていた。
「(なんなの、すごい人気者じゃん……)」
入学式の前日に出会った、私の婚約者候補のうちの一人。
「(名前は確か、日比野 陽太……)」
あとの二人は、私より一つ年上だと聞いている。
学園内に婚約者候補達がいるとおじいちゃんが言っていたけど、まさかそのうちの一人と同じクラスになるなんて。