結婚なんて、ゼッタイお断り!
「あ、おはよう美桜ちゃーん!」
「……」
「あれ、美桜ちゃんどうしたの?具合でも悪いの?」
「べ、別にそんなじゃ……」
「僕、美桜ちゃんと同じクラスになれてすごい嬉しい!美桜ちゃんは!?どう!?僕と一緒で嬉しい!?」
陽太はスキップしながら私のとなりまできて、勢いよく話しかけてくる。
……やめてよ、そっとしておいて。
目立ちたくないんだから、話しかけてこないでよ!
陽太がどうしてこんなにもみんなから人気なのか、理由は知らない。
でも、だったら尚更、私なんかと関わらないほうがいい。
私のせいで陽太まで怖がられて、ひとりぼっちになったらって思うと怖くなった。
「お、おい陽太。あんまりその人に話かけないほうが……」
「そ、そうだよ陽太くん」
「だってその子、例のあの子……だよ?」
「小学生のときからヤバいウワサが……」
「悪女って呼ばれてたって……」
あちらこちらで聞こえてくる、私の陰口。
「……っ」
分かってるよそんなこと、今さら言われなくたって。
結局私の中学校生活も、変わらないんだ。
心が……痛いよ。
「何言ってんの、みんな?美桜ちゃんは僕のお姫様だよ?」
「なっ!?ちょっ、えぇ!?アンタ何言って……っ!」
この場から消えてしまいたい。
そう思ったとき、陽太のハツラツとした声が飛んできた。
「それに、なんてったって将来の僕のお嫁さんです!」
「や、やめてってば……!」
陽太のトンデモ発言に、クラスメイト達は全員『えぇ!?』と戸惑いの声をあげる。
「──だから、さ。美桜ちゃんにそんなこと、言わないでくれない?すっげぇ不愉快なんだけど」