結婚なんて、ゼッタイお断り!
……あ、あれ?
あの可愛いワンコ系男子だったはずの陽太の雰囲気が、一瞬だけ違って見えた。
今だって、顔は笑っているけど、目はずっと怒っている。
クラスメイト達はそんな陽太を見て、それ以上何も言わなくなった。
「(もしかして、私のために怒ってくれた……とか?)」
……って、いやいや!
そんなこと、あるわけないし!
プイッと顔を逸らして、私はまた窓から見える桜のほうを見た。
……お礼なんて、言わなくていいよね?
「ほら、日比野くんの席はそこじゃないでしょ!早く席につきなさい!」
「はーい!」
遠藤先生の注意に、手を挙げながら返事をする陽太は、もういつも通りみたいだった。
「美桜ちゃん!今日から中学生活、一緒に楽しもうね!」
「……っ!」
そう言って私の元を離れていく陽太のほうを、見ることができなかった。
だって、陽太が言ってくれたその言葉は、ずっと私が欲しかった言葉だから。
ドキドキして、顔が赤くなっていく。
冷めた心が、少しだけあたたかくなった。