結婚なんて、ゼッタイお断り!






稲瀬はそう言って、グッと大きな一歩で一気に私との距離を近づけた。

そして、そっと耳元でささやく。




「稲瀬組の組長の孫である俺と、大安寺組の孫のお前……」

「ち、近いってば!」

「俺たちが婚約すれば、もう敵同士じゃなくなる」

「どういう、意味?」

「これ以上狙われたくないなら、俺と結婚しろってこと」

「け、けけ、結婚!?」




予想もしていなかった稲瀬の言葉に、思わず彼を突き飛ばしてしまった。

でも、稲瀬はビクともしない。






「わ、私は結婚なんてっ、絶対に──……」


〝結婚なんて、絶対にしない。〟

そう言おうとした、そのとき。






「――美桜ちゃん!」

「あいつ、どこまで行ってんだよ」

「わーい!僕の婚約者さん、発見ー!」





< 9 / 135 >

この作品をシェア

pagetop