歪んだ月が愛しくて1
「ねぇ、立夏くん」
「、」
クスッと、九澄先輩の口元が緩む。
その笑みは深く、ゾクッと背筋が凍る不気味な感覚に陥る。
「もし君に仲良くなりたい人がいるとして、でも君のアプローチは一向に相手に届かない。こう言う場合何が一番悲しいと思いますか?」
「何、言って…」
「つまり君が僕の立場だったら何が一番嫌ですか?」
「………」
九澄先輩が何を言いたいのか分からない。
いや、九澄先輩は俺に何かを言わせようとしている。
「……嫌われる、こと?」
「いいえ」
分からない。
俺には彼等の望むものが全く分からない。
「一番悲しいことは、何の関心も向けてくれないことです」
一瞬、九澄先輩の声がワントーン下がった。
でもそれは本当に一瞬のことですぐに穏やかな笑顔に戻っていた。
「だから嬉しいんですよ。いくら君が僕達を拒絶しても君は僕達を無視しない。暴言であっても文句であっても、君はちゃんと自分の言葉で僕達に伝えてくれる。それは君が僕達に関心がある証拠だと僕は思うんです」
「、」
関心がある?
俺が、覇王に?
……そんなはずない。
そんなはず、あるわけがない。
「だから、今度は僕達を見て頂けませんか?」
早く否定しないと。
無理とか、嫌だとか、いつもみたいに拒絶しないと。
「生徒会の一員でも覇王でもない、僕達自身を」
紫暗の瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。
力強くて慈悲深い、優しい瞳が。
「立夏くん」
スッと、俺の前に九澄先輩の手が差し出される。
「友達になって下さい」
「………は、」