歪んだ月が愛しくて1



「尊!そう言うところがダメなんだって!この間のことちゃんと反省しろよな!」

「目付き悪いんだからせめて態度くらいどうにかした方がいいわよん」

「余計に怖がらせてしまいますよ」

「知るか。コイツが最初に喧嘩売って来たんだろうが」

「被害妄想…」

「あ?」

「は?」



何いきなり凄んでんの?



「リカ、声に出てるよ」

「何が?」

「くくっ、被害妄想ってりっちゃんサイッコー!うちの王様にそんなこと言えちゃうのはりっちゃんくれぇしかいねぇよ!」

「王様も形なしですね」



……マジか。

え、俺口に出してた?



恐る恐る会長の姿を視界に捉えると、会長は額に青筋を立ててご立腹の様子だった。



しまった…。



「もう仕方ないな。ほら尊も仲間に入れてあげるからこっち来なよ」

「仲間?何のだよ?」

「“リカと仲良くなり隊”の仲間だよ」

「「は?」」



俺と会長の声がハモる。

いやいや、初耳なんだけど。



「誰がそんなもんに…」

「いいのけ?これを逃したら最後かもしてねぇぞ?」



陽嗣先輩は会長の言葉を遮って挑発紛いなことを言う。



「そうですね。立夏くんが生徒会に入りたくないと言っている以上、覇王の報復を屁とも思っていない彼に生徒会強制令は何の意味も成しませんよ。となればこう言う手段に出るしかないのでは?」



それに便乗する、九澄先輩。



「本当みーこは素直じゃないな」



そう言って会長の手首を掴んで自分の手の上に重ねた、未空。
当然その行動に「勝手なこと言いやがって…」と不満げな声を漏らす会長だが、意外にもそれ以上の文句を言うことはなかった。
それどころか未空によって固定された手首を解こうともせず、まるで鎖に繋がれた飼い犬のようにされるがまま動かない。
傍若無人と噂される会長の意外な一面に内心驚いた。



「じゃあ全員揃ったってことでっ!」

「“りっちゃんと仲良くなり隊”の」

「結成ですね」

「……勝手にしろ」



それはこっちの台詞だ。
仲良くしたいなら4人で勝手にやってくれ。俺を巻き込むな。



『…ごめん、シロ……』



だって巻き込まれて嫌な思いをするのはいつだって俺じゃないんだから。



「……俺、必要以上に関わる気ないから」



それなのに会長以外の3人は互いに顔を見合わせて微笑む。
会長の冷ややかな美貌も初対面の時に比べて幾分柔らかく感じ……いや、気のせいだな。



「いいんじゃねぇの、今はそれで」

「ええ、一歩前進ですね」

「そんなリカも大好きだよ!」

「煩ぇよ。耳元で喚くなボケ」



何がいいものか。

結局は自分達の都合の良いように事を進めているだけじゃないか。

そりゃそっちは良いかもしれないが、俺は…―――。



関わるだけでも危ないって言うのに。

でも彼等が大人しく引いてくれないのは先程までの流れで実証済みだ。



……だから仕方ない。

そう思い込むようにして僅かに弾む気持ちを無視することにした。



「……自分勝手かよ」



皮肉交じりの言葉は4人の耳にも確かに届いた。

ただその口元が緩んでいたことに俺だけが気付いていなかった。


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