歪んだ月が愛しくて1
その日の放課後。
俺は未空から逃げるように北棟の屋上に来ていた。しかも紀田先生のオマケ付きで。
「今日もお前の噂で持ち切りだったな」
「嬉しくないんだけど…」
屋上に現れた紀田先生はどう言うわけか今朝の一部始終を知っていた。
紀田先生だけじゃない。あの後クラスでも頼稀達から質問攻めに遭い朝から踏んだり蹴ったりだった。しかもどうやら学生の間だけでなく教師達の間でも結構噂になっているらしい。
噂の詳細は知らないが人の噂も75日って言うから時間が解決してくれるのは待つしかない。いや、75日も待ちたくないのが本音だが。
「―――で、お友達になったと?」
その単語にむず痒さを覚えてフィルターを噛んだ。
聞き慣れない言葉に戸惑いを隠せない。
「……そもそも友達の定義って何?」
「俺に聞くなよ。てかそんなもん適当だろう。“友達になりたい”って思った時点で友達なんじゃねぇの?」
「適当」
「だから適当でいいんだよ」
そんなもんかね…。
紫煙を吐き出して想いに耽る。
『なーに変な顔してんのさ?俺達もう仲間っしょ!』
……今でも覚えてる。
嬉しい気持ちとちょっと複雑な気持ち。
それが交互に表れてどうしていいか分からなくて、気付いたらそこが俺の帰る場所となっていた。
きっと初めてだったからだ。
友達と呼んでくれた人も、仲間と認めてくれた人も。
『…ごめん、シロ……』
それなのに俺は…、
「あーあ、文月が悲しむぞ」
ふと文月さんの名前を出されて我に返る。
「……何で?」
「お前が覇王の連中とお友達になったから」
あ、忘れてた。
「……言わなきゃバレないよ」
「いやいや、絶対バレるだろう」
「何で?」
「何でって決まってんだろう。ストーカー並にお前のケツ追っ掛け回してるロリコン野郎が気付かないわけねぇからだよ」
ロリコンは関係ないと思うが。