歪んだ月が愛しくて1
「てか、あそこがどう言う場所か分かってて行ったのか?」
「あそこ?」
「食堂の中2階」
紀田先生の言葉に首を傾げる。
すると紀田先生は「学生棟の方な」と付け加えた。
「別に…、ただの食堂じゃないの?」
「あー、やっぱり分かってなかったか…」
「……何かあんの?」
その言い方が妙に引っ掛かった。
「あそこは特別なんだよ」
「特別?」
……何か、嫌な予感がする。
「あそこは代々生徒会役員専用の場所で、今では覇王以外立入厳禁ってことになってんだよ」
はい、予感的中。
紀田先生の説明によると高等部の食堂は北棟と学生棟にそれぞれ設けられ、北棟の食堂は平日の朝と昼、学生棟の食堂は平日の朝と夜のみ開放されている。また学生棟の方は土日祝日は24時間利用可能で、反対に土日祝日の北棟の食堂は一切利用出来ないとか。
そして学生棟の食堂の中2階は通称“Little Eden”と呼ばれ代々生徒会役員専用のスペースになっていて今では覇王以外の立入を禁じられているらしい。
「つまり周りの連中は“Little Eden”にいる=覇王の一員と認識してるわけだ」
最悪だ。
あの時いつも以上に喧しかったのはそう言うことだったのか。
「やってくれたな…」
何が「友達になりたい」だ。
バリバリ他意ありまくりじゃねぇか。
端っからこれが狙いだとしたら立ち直れない。
「これだけ噂が広まったってことはその分お前が生徒会に入ったと周囲に認識されたことになる。そう考えると文月にバレんのも時間の問題だろうよ」
「確かに…」
「まあ、哀さんが食い止めてくれりゃ時間稼ぎにはなると思うがあんまり期待すんなよ」
「期待?」
「あの人は文月に絶対服従だからな」
「………」
これがあの男のことだったら素直に頷けるのだが、文月さんと哀さんの関係はそんな一言では言い表せない気がする。
ただの願望かもしれないが、2人には一方的な結び付きだけでなく互いに信頼し合っているそんな関係に見えるのだ。