歪んだ月が愛しくて1
初めはアイツが吸っていた。
でも俺が文句言う度にアイツは困ったように笑って逆にそれがムカついたから、いつしかアイツの煙草を奪って吸うようになった。
『……お前、何吸ってんの?』
『煙草』
『いやいや、見りゃ分かるし』
『じゃあ聞くな』
『いや、だから、誰のを何で吸ってんのかって聞いてんだけど!』
『お前のに決まってんだろう。態々外出たくねぇし』
『煙草なんてダメでしょうが!中学生が何やってんのさ!』
『お前だって中坊だろうが。一つしか違わねぇくせに偉そうに説教垂れんな』
『だとしても!シロはダメでしょう!』
『何で?差別?』
『差別とかじゃなくて!』
『じゃあ何だよ?』
『だって、シロは…ずっと嫌がってたじゃん、これ吸うの…』
『嫌だけど』
『じゃあ何でっ』
『お前が吸うのが嫌なだけ』
『え?』
『お前には似合わねぇって言ってんの。日本語分かる?バカ?』
『いや、分かるよ分かりますけど!』
『……悪魔なんて、俺にぴったりだろう?』
「勘違いするなよ」
「、」
頼稀の言葉にハッと我に変える。
「俺が“趣味悪い”って言ったのはそれをお前に渡した紀田のことだ。お前のことじゃねぇよ」
「え…」
「お前は悪魔じゃない」
「、」
言い当てられた。それもピタリと的確に。
今の俺はきっとバカみたいな顔をしているに違いない。
「死神でもない」
頼稀って何者?
俺の何を知ってるの?
「ましてや化け物でもない」
疑念が沸く。
でも不思議と不快感はなかった。
そればかりか頼稀に対する俺のセンサーが麻痺しているみたいで警戒心もクソもなかった。
「ただの不良少年A」
「………」
頼稀は俺の手から煙草を奪い取ると当然のように自分の口に銜えた。
しかも勝手に俺のブレザーのポケットに手を入れてライターを探し始めた。
ふぅ…と、紫煙を吐き出す。
「……不味い」
文句まで。
じゃあ吸わなきゃいいのに。
「お前も紀田も舌可笑しいんじゃねぇの?」
でも一つだけ分かったことがある。
頼稀は皆が言うように無愛想で、人のこと見てないようで見てるエスパーで。
「……フッ、何だよ不良少年Aって?」
「何となくだ」
「人を犯罪者みたいに言うなよ」
「未成年の喫煙は法律で禁じられている。立派な法律違反だろう」
結構好きな奴だった。