歪んだ月が愛しくて1
「灰皿」
「吸うの早くね?そんな不味い?」
そう言って頼稀に携帯灰皿を手渡した。
「不味い。身体に毒」
「じゃあ何で吸ったんだよ?」
残り少ない貴重な煙草を。
これはまた紀田先生のパクるしかないな。
「……気になったから」
「何が?味?」
思春期ならではのあれか。
まあ、俺も人のことは言えないが。
「お前が泣きそうな顔してた理由」
「………は?」
その言葉に反応が遅れた。
何を言い出すかと思えばまた訳の分からないことを。
「そのくせ満たされたみてぇな顔して…」
「………」
「だからどんなもんか気になってたんだ」
……俺、満たされてたのかな。
だから思い出すと分かってても吸っていたのか。
ああ、まさか頼稀に気付かされるとは。
「結果不味かったけどな」
「もうやんねぇ」
そう言うと頼稀はふはっと笑った。
だから俺も釣られて口元が緩んだのかもしれない。
こう言うのを一緒にいて楽って言うのかな。変に気張らなくていいし頼稀の前では有刺鉄線も境界線も無駄な感じがする。上手く説明出来ないが強いて言えば何となく…。
『あのさ、前に俺と会ったことない…?』
何となくだ。
「まだ気は済まないか?」
でも時々無性に自分と言う人間が嫌になる。
「……まだ」
―――何が可笑しい。
お前だけ暢気に笑ってんじゃねぇよ。
散々好き勝手やって来て、挙句の果てには自分の罪から逃げ出して。
友達?仲間?
お前にはそんなもの必要ない。
お前にはそんな資格ないんだから。
(分かってるよ…)
誰かが心の中で嘲笑う。
耳を塞ぎたくなるような言葉を、目を背けたい事実を。
だから俺は勘違いしちゃいけない。絶対に。