歪んだ月が愛しくて1
「こぉら尊ぉおお!いきなり部屋飛び出したかと思えばこんなところで油売るなんてどう言うつ、も、り…」
「未空…?」
「チッ」
そこに現れたのは未空だった。
未空は物凄い剣幕で会長に掴み掛かるが、俺と目が合った途端驚愕の表情を浮かべてまるで餌を欲する金魚のように口をパクパクさせたかと思えば。
「ギャャアアアア!!リカ何でそんなところにいんのおぉぉおおお!?」
奇声を上げた。
「……煩い」
両手で耳を塞いで文句を言う。
「煩いじゃないよ!てか何で尊も止めないんだよ!」
「煩ぇ」
「リピートしなくていいから早くリカを止めてえぇええええ!!」
未空はフェンスに張り付いて離れようとしない。
檻の中の猿か。
「リカ!危ないからこっち来なさい!」
そう言ってフェンスの隙間から手を伸ばす。
「リカ!」
『シロ!』
「、」
でもその手を掴むことが出来なかった。
掴んでしまったら最後、もう離すことが出来ない気がしたから…。
「リカ早く!」
「……声でか」
俺にはその手を掴む資格がない。
「いいから早くこっち来てよ!危ないじゃん!」
「はいはい」
未空を大人しくさせるためにフェンスを登って境界線を越えた。
行きと同じようにフェンスの頂上から飛び降りると未空は俺に駆け寄ってベタベタと身体を触って来た。
「だ、大丈夫っ!?」
「何が?」
「何がって…、あんな高いところから飛び降りたのに…」
そう言われてフェンスの頂上を見る。
あんな高いところと言うが飛び降りれないほどの高さではない。ちまちま降りるより遥かに早く済む。
それなのに未空は俺の身体に触れて怪我をしてないかと真剣な顔で確認している。
「怪我してない?大丈夫?」
何だか変な感じだ。
「……平気」