歪んだ月が愛しくて1
「もう危ないことしないでね。心配するじゃん」
「心配?」
「心配するでしょう!今にも飛び降りそうな場所にいてその上あんな高いところから飛び降りるなんて!今回は怪我しなかったから良かったけどもし怪我してたらどうすんのさ!?」
「そんな柔じゃない」
「でも心配するの!」
何で…、とは聞かない。
聞きたくもない。
「てか何でここにいるの?トイレは?」
「トイレ?」
何の話だ。
「頼稀が言ってたよ。リカはトイレに籠城中だって」
……は?
トイレに籠城だと?
それはつまり俺が何らかの理由でトイレから出られない状況ってことか?
てか何らかの理由なんて一つしかない。
「え、違うの?」
これは嫌がらせか。
それとも……いや、きっと嫌がらせだな。
早く戻って来ない俺に対する報復に違いない。
「どうしたの?まだお腹痛いの?」
だからってトイレに籠城はない。
人を勝手にトイレの住人扱いしないでくれ。
「……もう、痛くないよ」
「良かった。でも治ったなら教室に戻って来てよ。ずっと待ってたんだからね」
は?
ずっと?
「……嘘?」
「本当だよ!全部のトイレ確認したんだから!」
「は?」
そこまでしたの?
「何で…」
「言ったでしょう、リカのことが心配だったの」
「………」
心配って、何?
たった数時間いなかっただけじゃん。
捜させてしまったことは申し訳ないと思うが、そもそも何で俺を捜していたんだ?
俺に用があるようには見えないが。
「次からはちゃんと帰って来てね」
大事にされるのは困る。
次からサボる時はちゃんと言っておこう。
「で、何でここにいたの?」
「何となく」
「何となくじゃ分からないよ〜」
特に理由はない。
ただ独りになりたかっただけ。それと煙草を吸うためだった。
「そう言う未空は?その人に用があったんじゃないの?」
クイッと顎で会長を指す。
すると未空は俺の耳元で「あー!」と大声を出した。
……煩い。
「そうそれ!尊みっけ!」
「あ?」
「あ、じゃなくて捜してたの!」
「捜してた?」
「だっていきなり生徒会室飛び出すんだもん。何事かと思うじゃん」
「……何でもねぇよ」
「隠し事か?みーこのくせに生意気〜」
「煩ぇ」
「いっでぇ!!」
会長の鉄拳が未空の頭に躊躇なく落とされる。
まるで親子みたいだなこの2人は。